個人の主体性と経営視点

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単にお金をたくさん儲けることを経営と勘違いしている人が増えている昨今、この言葉がどれだけの人に響くのか疑問です。
経営に必要なスキルが収支をプラスにしていくことやそれを維持していくことだけであれば、お金儲けをする方法は正直なところ、いくらでも思いつきます。そうしたお金儲けを目的としたビジネスが横行し、そのノウハウがまたお金のために売られる。そしてお金を儲けることが幸せの定義であると過信して、その幸せを他人に押し付けることをビジネスにするような、お金儲け宗教的な行為がネット上にもリアルな広告にも蔓延っています。

大量生産による非効率はいま極まっており、そのために生じる負の遺産を弱小国や弱者に押し付けられることを、人類は地球が滅びるまで続けるつもりなのでしょうか。
そこでいま起きている明るい兆しこそが、量から質の時代へのシフトだと思います。
質を極めていくということは、人とモノの関係性、人と人の関係性を深く掘り下げていくことです。

それは、細かいひとつひとつのことを、自らの主体性できちんと評価し、考えて行動するということだと僕は信じています。
ひとつのモノを売るにしても、一般論的な解釈で「これはこういったタイプの人に当てはまる商品である」と捉えずに、ひとりひとりに向き合った商品提供をする。これが可能になるまでに文明は進歩したのだと捉えることもできます。

TOWNSHIP LABOでの活動の基本的思想のひとつに、メンバー全員が経営者視点を持つということがあります。
ひとりひとりの自分が、何とどう関わるのかを考えていくことが今後の社会において必須になるという思いがあるからです。
ただ単純に与えられた仕事をこなす時代はもうすぐ終わりを告げます。そのひとつの例が、AIやロボットの進化です。
与えられた仕事をルール通りにこなすことにかけては、既に人間よりもロボットのほうが上です。
それでは人間が今後どうやって価値を出していくのかというと、それぞれの幸福の価値の置き方やお金の定義を現代に即した形でアップデートしていくことだと考えます。

「わたしがこれをやる理由はなにか?」を突き詰めて考えることが、組織内外を問わず求められる時代です。
そのときに、肩書や履歴書や実績といった鎧は役に立たなくなります。具体的に目の前にある課題について、どれだけ深く洞察ができるのか、どれだけ広く視野を持つことができるのかが問われます。

ビジネスというものは必ず、人と人が関わります。商談の相手が猫であることは皆無です。
そうであるならば、必然的に「相手の人間が何を求めているのか?」を理解する能力が問われます。
相手を理解するとき、自分の価値観や価値基準はまったく役に立ちません。
相手の好き嫌いは、相手の価値基準で測られるからです。
そこで必要となってくるのが、相手の感情、性格、背景、情熱、芸術性、論理性など、さまざまなパラメータを、頭ではなく感覚で把握していくことです。これを簡単に言うと「相手を知る」という言葉に集約されます。
この「相手を知る」という行為に、自分の価値基準という色眼鏡をかぶせてしまったが最後、相手のことを正確に理解しようという試みは大失敗に終わります。それにとどまらず、さらに「色眼鏡で相手を見て誤解した状況を相手に押し付ける」という、人なら誰でもやりたくない恥ずかしいことになってしまうのです。

誤解を前提に論理展開してしまうと、相手の求めているものとは相当に外れた結論を招きます。
だからこそ、コミュニケーションは大切です。
コミュニケーションは、あらゆるフェーズにて常に発生していなければならないのです。
最初に話を聞いたからとか、以前言っていたことを前提にするとか、その時点で齟齬が生まれます。なぜなら相手も自分も進化しているからです。
過去の相手の言動を引っ張り出して、それで相手を評価するということは、全くの無意味。
だからこそ、「常識」「普通」「当たり前」「みんなそうしてる」「あなたがそう言った」といった言葉は、危険なのです。これらの言葉を発した時点で、自分が自分に負けたと思って間違いありません。

このようなことは、日本ではかなり発展が遅れているというのが僕の認識です。
アメリカ留学時代から現在まで、数々の外国人たちと接してきました。
その結果実感していることが、日本人は決めつける人や意見の異なる人(価値観の違う人)を理解する能力がとても低い人が多いということです。「日本人」というレッテルを自ら貼ってしまっているのです。
同じ日本人でも、様々な考え方の人がいるのに、「普通の日本人」を想定してしまっていませんか?
多様性をほんとうの意味で理解するためには、多様性のある文化や環境に自らが触れて体験する必要があります。
頭では理解できない世界です。

そのため、新しいことにチャレンジしたり、様々なタイプの人と話したりすることが重要なのです。
同じ穴の狢(むじな)をやっていると、何も拡がらないのです。

個人の自立が達成され、ほんものの主体性が確保されたとき、はじめて「経営」のスタートラインに立つことができるのです。

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