生体験しているのか

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さて今日は珍しく、仕事の話です。

日本のIT業界でオフショア開発といえば、もっぱら中国の話題で持ちきりの今日ですが、その影でインドでのオフショアのマーケットは地道に、そして確実に実績をあげてきています。
そんなオフショアの生の現場に自分がいるということは当初あまり意識していなかったのですが、最近それを強く感じています。

ちなみにオフショア開発とは、システム開発などを海外の会社や子会社などに委託することをいいます。
安価な労働力を得られることがメリットです。人件費の高い日本では、現在オフショア開発を行う企業が増えてきています。

オフショアにおける最大の難点は、言葉や文化、習慣などの違いによるギャップに起因するコミュニケーション不足によるトラブルです。
これをうまく処理するため、「ブリッジエンジニア」という職種が誕生しました。
その名の通り、両国間の問題を軽減するための橋渡し役です。
「へぇ~、ブリッジエンジニアか~」なんて思いながらIT関連の雑誌を読んで他人事のように思っていたのは昔の話。
まさに今、ブリッジをやっている状況です。

日本におけるオフショア開発の受注先としては、インドや中国のほか、ロシア、カナダ、シンガポール、最近ではマレーシアやベトナムやタイなども注目されています。
こうした状況ですから、各国にてブリッジに苦労なさっている日本人の方もさぞかし多いことでしょう。
ブリッジのノウハウというものは、国にもよると思いますが、まだまだ世の中で一般化されていないため、それぞれ皆さんが経験で培っていくしかないというのが現状のように思います。

インドにおけるソフトウェア開発の手法は、ほとんどがアメリカに習っています。
昔から、アメリカと日本では開発手法がまったく違うということが言われていますが、それがインドと日本の関係にもそのまま当てはまります。
それに加え、インドの文化や習慣は、アメリカのそれとは違い、日本人にはあまり馴染みがないということが、ブリッジを一層難しいものにしていると思います。
また、インド英語の訛りが日本人にとって聞き取りづらいということも大きな難題のようです。

さて、今自分が関わっているプロジェクトは、ブリッジという意味では大きな問題をたくさん抱えています。
まずひとつめに、取引先が「純日本的」プロジェクトを推進する大企業であることです。
もうひとつは、エンドユーザー企業がアメリカにあることです。
つまり、
インド~日本~アメリカ
という図式です。

こんな図式でやっていると、毎日様々な問題に突き当たります。時差の問題なんかは、問題にならないくらい些細なことです。

今日も、ひと悶着ありました。
今日は土曜ですがチームは追い込みでフル稼働。外の気温は連日40度越えで、体力的にもきつくなってきている矢先です。
明日は日曜、あさってはMay Dayで祝日。チームのメンバーは、久しぶりに2連休がとれるというところ。(私は仕事ですが)
この「(私は仕事ですが)」という部分こそが、日本人的感覚の端緒が見え隠れしている部分なのですが、それは置いておきましょう。
日本の取引先を、「日本」と呼ぶことにしましょう。インドの開発チームのプロジェクトマネージャを「PM」と呼びます。

日本:「うずらさん、5/3までにこれとこれとあれを終わらせろとアメリカに言われているのでやってほしいのですが」
うずら:(PMに)「かくかくしかじかだそうだよ。追い込みで大変だろうけど、見積もりを今日中にできるかな」
PM:「そんなこと急に言われても困るんだよね、いつもこの調子だね。ええと、これとこれはできます。あれはこれから分析します」
うずら:(日本に)「これとこれはできますがあれは分析中ということですね」
日本:「困ったなあ、うずらさん。それでは、5/2までにアメリカに報告する必要があるから、あれの進捗を報告してください」
うずら:(PMに)「5/2までに報告しないといけないんだけど、明日って誰かくるのかな?」
PM:「うずら、4/30と5/1は休みだよ。チームのメンバーも体力消耗してるし、明日もあさっても休ませるよ」
うずら:(日本に)「(省略)ということです」
日本:「うずらさん、会社全体でプロジェクト成功させようって状況なのにそんなこと上司に報告できないよ。進捗ないんじゃ何してるのってことになっちゃうよ」
うずら:(日本に)「プロジェクトは成功させたいので私はいくらでも努力を惜しみませんが、チームのメンバーに休日返上で働けと強制する権利は無いもので……」
日本:(かなり長時間無言のあと)「ていうか、そもそもなんでこの要求ができないのかなぁ?だって、あれだけでしょ?あんまりインパクトないと思ってるんですが」
うずら:(問題がすり替わったなあ)「いやこれは、かくかくしかじかという理由であれとこれとそれもこうなっているからなんですよ」
日本:「それは別の問題ですようずらさん。そもそもこういう問題が出ることはあんな理由やこんな理由で想定できているわけで云々」
うずら:「もう一度相談してきます」
うずら:(PMに)「こんなこと日本に言われているんだけど、どうしようか」
PM:「ごめんちょっとまって。いま他の作業でやばいから」 (10分後)「いやー待たせてごめん、で、なんだっけ?」
うずら:「いやほら、えーとなんだっけ。あ、そうそう。あの件だけど、話をすり替えられちゃってさ。こういうこと言ってるんだよ」
PM:「ねえうずら。そもそもさ、予定になかったことをどうして次から次へと追加してきて、しかも明日までにやれとか無理を言われるの?無理だよ」
うずら:「いやそれは分かってるんだけど、日本が言ってることをそのまま伝えてるだけだよ。相談しよう」
PM:「モームリ。しかもさ、これとこれとあれをやれって言うけど、これとこれはもうずっと前に解決してるよ。なのにどうして何度も何度も同じこと日本は聞いてくるんだ。きちんと内部で情報共有してからこっちに回してくれって伝えてよ」
うずら:(日本に)「これとこれはもう終わっている話で、そちらのAさんが経緯をしってるはずです。あれについては、やっぱり5/2に進捗は出せないようです」
日本:(内部でちょっと確認して)「あーそうらしいですね。じゃ、これとこれはOKと。で、あれの件ですがやっぱりまずいですよ。これって、この先もずっとこの調子で休日は無理ってことなんですかねえ」
うずら:「率直に言うと、文化の違いも大きいです。ちなみに、土日はプロジェクトのマージンとして……」
日本:(さえぎるように)「土日はマージンですよ。そう考えています」
うずら:「ですよね。で、ここのPMはそうは考えていないんですよ。土日はマージンではないんです」
日本:「ふむふむなるほど。文化の違いなのかなぁ。これって今後の問題もありますよね。いいんですかねこれで。困ったなあ。このまま上に報告すると、会社として何か対策を打たないといけなくなるかも」
うずら:「PMは必ずしも会社としての意見を述べていません。PMとしてのチーム内での判断です。会社としてどうするかという話は私にはできないので相談します」
日本:「そうしたほうがいいですね、私もそういう形で報告しますよ」

あーつかれた。
これをシリーズにしようかな(笑)

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