iPhone 6とAppleについて(reprise)

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結局iPhone 6を予約してきました。積極的にではなく、消去法でこれしかなかったのです。

今回Appleの最大の失敗は、2種類用意したタイプのどちらもが、前モデルよりも大きいことだと思います。

3年近くにわたって、Appleはシェア低下に歯止めをかけられずにいます。欧米では目も当てられない状況で、日本を含むアジア各国とフランスではiPhoneが未だ根強い人気を誇っていますが、そのシェアも低下しています。

これまでは、画面サイズが小さいことがiPhoneの復権を阻む大きな理由のひとつであるという見方が有力でした。

しかしそれは本当なのでしょうか?

日本人はコンパクトなものが好きではなかったのでしょうか?ウォークマン的発想はもう時代遅れなのでしょうか?
そんなことはないと思います。大画面が魅力的ですよ、って宣伝されているので、大は小を兼ねるって安易に考えがちなだけだと思います。

IS05やXperia Z3など、小さな端末がいくつもリリースされています。そして、iPhoneを選ぶ大きな理由のひとつが本体のコンパクトさだったという知り合いもたくさんいます。

スティーブ・ジョブズがiPhone 4Sまでの4インチ未満の画面サイズにこだわっていたという話も有名です。

以前書いた通り、iPhone 6 plusはGalaxy Note 4を、小さい方のiPhone 6はNexusを意識したサイズであることは明らかです。

iPhone 4が世に出た頃、Appleを追撃するAndroid勢の多くは大画面化という差別化を図りました。これが欧州や北米で受け入れられてシェアは逆転しました。その背景には、「ジョブズがいる限りAppleから大画面化されたiPhoneはリリースされないだろう」という予測もあったのではないかと思います。

Macintoshの時代からAppleにとって日本は重要なドル箱でした。ところが、日本人ユーザーの多くは大きなiPhoneを望んでいないことはアンケート等で明らかになっているのに、それでも大画面のiPhoneをリリースしたばかりか、従来サイズを選択肢から外してしまいました。

これはAppleが以前のAppleとは違う会社になってしまったことを端的に示していると思います。ユーザーよりもシェアを優先させたのです。

長年のAppleユーザーならば似たような状況を思い出すかもしれません。ジョブズがAppleを追い出されたとき、崩れかかったApple帝国は既存ユーザーを見捨てて新規ユーザーの獲得に走りました。ジョブズが戻ってこなければ、AppleはDECやIBMのThinkPadと同じ道を辿っていたに違いありません。

いま、ユーザーの多くはiCloudやMacに囲い込まれ、Androidに移行できずに惰性でiPhoneを使っています。この事実にAppleが気づいていない筈もなく、彼らはイノベーションでユーザーを惹きつけるのではなく、囲い込みに走り出したようです。

SwiftはSONYのβの再来かもしれません。SONYが製品に様々な独自規格を使ってユーザーを囲い込もうとして最終的に失敗したように、いまのAppleは失敗に向かっているのではないでしょうか。

初代iPodから続いてきたDockコネクタは独自規格でありながらオープンな仕様だったため、サードパーティのベンダーに新たな市場を提供しました。ところがLightningコネクタには認証用チップが埋め込まれ、魅力的な周辺機器の裾野を切り捨ててしまいました。3世代目のiPadから1年も経たないうちにほとんど性能の変わらない4世代目を発売しましたが、コネクタがLightningに変わった以外にほとんど更新はありませんでした。Appleは焦っていたのではないでしょうか。長年のブラッシュアップで成熟していたDockコネクタの生産技術はすべて打ち捨てられ、壊れやすい上に高価なLightningケーブルを新たに買うことをユーザーに強制するのはいかがなものでしょうか。

USBポートを搭載した世界初のコンピューターはiMacです。Safariのベースとなるwebkitはオープンな規格です。Objective-CはC言語を拡張して30年も使い続けられてきた、良い意味で枯れた言語です。このようにして、Appleは革新的なモノを手軽に使える形で提供していくことで、ブランドの価値を上げてきたのではないでしょうか。

SwiftにできてObjective-Cにできないことは何もないはずですが、Objective-CのAPIを拡張せずに新しい言語を採用した背景には、開発者の裾野を広げたいという意図の他にも、iOS用のアプリを簡単にAndroid OSにポートする各社のツールを駆逐しようとする意図を感じます。

こうして選択肢を奪われたユーザーはiPhoneを見捨てるでしょう。iPhoneの大画面化によって、iPhoneを捨てるユーザーとAndroidを捨てるユーザー、いったいどちらのほうが多いのでしょうか?長期的にみて、ずっとApple製品を使い続けてくれるユーザーはどちらなのでしょうか?

iPhoneは4Sまで熱狂していました。新製品の発表は徹夜してでもリアルタイムで見ていましたし、期待を裏切られない製品が次々と現れました。ところがiPhone 5の縦長デザイン、HDD内蔵MacBookの撤廃、これらのことは同時に起き、製品を買う動機がどんどん無くなっていったのです。

それでもiPhone 5を選んだのは、Androidを選ぶメリットが無かっただけです。iPhoneを選ぶ積極的な理由はありませんでしたし、この頃くらいからiPhoneのメリットを探して無理に納得しようとしているユーザーが身の回りに増えてきました。

Apple Watchのひどい外観を褒め称える記事にはうんざりします。あのデザインはひどいと思います。本質を評価せず、目新しさだけを褒め称える記事にもうんざりします。Appleは、その製品を使うことでどのようにライフスタイルが変わるのか、もっと明確に示すべきだと思います。過去の成功はライフスタイルの革命をテーマを貫き通してきたことによって得られたのだから。

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