プロ意識と金を繋げるな

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「プロなんだから、金を稼いでなんぼ」という言葉を発する人がいるでしょう。
この言葉を聞くときになんか、イラっとくる時とこないときがある。なんでイラっとくるのかと思ったら、そういう人って
「何事もプロとして仕事をする以上は、お金がきちんと稼げるものにしか手を出してはならん」的な考え方してるんですよね。
個人的にはそれちょっと違うんですよ。
「何事もプロとして仕事をする以上は、お金がきちんと稼げる形にすべき」も、ちょっと違う。
「何事もプロとして仕事をすれば、お金はきちんと後からついてくる」が、一番しっくりくるかな。
つまりお金は、やった仕事の価値のバロメーター。

TOEICを社員に受けさせる会社ってありますよね。僕も過去にいた複数の会社でTOEICを受けさせられました。でね、TOEIC対策のために勉強をしたらアカンと思うんです。なんでかって、それはTOEICの点数を上げるための行為であって、自分の英語の実力を正確に計測するのがTOEICをはじめとする試験の本当の目的だと思ってますから、TOEICの傾向に合わせて勉強してしまったら、英語のリーディング・リスニング能力を把握するバロメーターとして役立たずになってしまいますよね。
かくいう僕も30代の頃、たった1度だけTOEIC対策したことあります。CD付きの過去問題集を買ってきて、2回ほど通しでやっただけですけどね。
そしたらなんとしたことか、対策前に受けた試験では860点だったんですけど、過去問を2回やっただけで、965点を取ってしまったんですよ。
それってスゲーじゃん!ってなります?全然すごくないですよね。
だって対策してたらそりゃ点数はとれますよ。
でもね、僕の英語力がいきなりTOEICで100点以上に相当する向上をしたかというと、NOなんですよ。そんなに簡単に英語力がついたら誰も苦労しないっちゅーわけですよ。
TOEICの点数が良くてもでもまったく英語が使えない人、たくさん見てきました。

僕に言わせりゃ受験も同じことのはずなんですけどね。でも大学受験って傾向対策するのが受験者側も学校側も当たり前になっちゃってる。受験者のありのままの実力ではなくて、妙なアクセラレーションがかかった状態の「受験対策に特化した、偏った学力」を計測してますよね。これって学力なんて呼びたくないです。これは、受験対策力です。さらに言わせていただけば、受験前に模試を受けますよね。模試対策の勉強する人もいるわけです。というか、当然のように大勢がやってるわけです。
模試なんて本番の受験ですらないわけだから、これこそホンマに現在の自分の「受験対策力」の実力を知るための機会だと思うんですが、そこをまた妙なアクセラレーションかけてしまって、本来の実力以上の結果を得てしまったら、どこが自分の弱点なのかわからなくなっちゃいますよね。そしたら、その後の受験対策に支障があるというか、模試を受けた意味がなくなっちゃう。

話を元に戻しますが、プロとして仕事をする上で一番やっちゃいけないのが、お金を見て仕事をすることだと思ってます。

「どのような仕事をしたら顧客がお金を出してくれるか?」ではなくて、「顧客はいったいどのような課題を抱えていて、自分が提供できる課題解決に役立つ価値は何か?」を見るべきです。そこに皮算用が入るとロクな仕事ができない。
顧客にとって同じ価値しか与えられないのに売上のことを考えるのは、ぶっちゃけゲスい話だと思いますよ。それよりも、着目すべきはコストじゃないでしょうか。コストは自分が出してる金じゃないですよ。企業が大きくなればなるほど見えにくくなってしまいますが、コストってのは顧客が出してくれているんです。なるべく低く抑えるのは当然です。
たとえばとあるIT案件をこなすのに、PCを1台買う必要があるとします。10万円のPCを買うのか、20万円のPCを買うのか。そのPCの購入にかかったお金は、お客さんにチャージするわけです。高いものを買うのが悪いのではなく、きちんと要件に見合った「適切」な性能のPCを買うべきですよね。アンダースペックでもオーバースペックでも困るわけです。アンダースペックならば要件を満たせなくなりますし、オーバースペックなら無駄なお金を顧客に使わせるばかりか、メンテナンス費用や冗長性確保などでさらに無駄なコストが拡がる危険がたくさんあります。

さらに言えば、システム開発で値切りされた分をハードの価格に載せようとか、アホみたいな見積もりマニピュレーションが横行してます。これって裏切り行為じゃないですか。客にも自分(自社)にも。
「だってそうしないと儲からない」なんて子供みたいな言い訳を、名前だけは立派な企業の中で何度も目にしてきました。
信じられない話です。コンプライアンスはどこへ行った?
物事の適正価格というものがどんどん見えにくくなっていくばかりで、これじゃ日本のITも世界での競争力を失っていくのも当然だなあと思います。

プロとして成すべきはまず、お金を見ずにきちんと適切なものを提供すること。ITシステムで言えば、適切な要件定義から、適切な設計。そして適切な見積もりに繋げること。要件定義や概要設計がアバウトだと当然ながら見積もりもアバウトになる。そこをうやむやにしないのがプロです。
プロなんだから、きちんとコスト効果の高いシステムを作りましょうよ。そうして上がってきた見積書に記載されている金額には、きちんとしたプロとしての裏付けがあるわけですから、堂々と胸を張って顧客に請求できます。

ITシステムの場合、実際に使い始めてみないと効果がわかりにくい場合があります。僕は個人的に、こういった場合には顧客との信頼関係に基いて顧客に効果測定をしていただくのが理想と思います。もしもシステム提供側で効果測定するとなると、測定内容や結果のオープンネスとフェアネスを担保することに大きなリスクがあるからです。ここで守銭奴的な考え方に陥っていると、顧客による効果測定が信用できないとかいう話になります。ま、顧客とその程度の信頼関係しか築けていないならばご愁傷様としか言いようがありませんね。
不信任ベースの商売は、心が削られるので個人的には好きではないし、なによりもプロとして突き詰めた気持ちのよい仕事ができなくなるのが問題と思ってます。

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