いまやアップル(旧アップル・コンピュータ)は一部のコアなファンやアーティストたちだけのためのニッチな製品を売る会社ではない。いまや時価総額でマイクロソフトを越え、米国第2位の規模を誇る世界企業となった。
かつてのアップルを知る者にとって、こんな事態は数年前まで想像すらできなかったはずだ。
その躍進を支えたのは、創業以来の主力商品であるMac(Macintosh)ではなく、iPod, iPhone, iPadといったモバイルデバイス、そしてiTunes Storeという巨大配信サービスだった。
これだけの成功を収める企業だが、トップがあのスティーブ・ジョブスである限り体質はそう変わっていないように思う。それがこの企業の凄いところでもあり弱点でもあると思う。
つまり、本当に「良い」と思える製品を新しい発想と創造力を支えに製品に落し込み、販売する。夢を売る。ここまでならやってる企業はたくさんある。ジョブスが一度アップルを離れ、戻ってくるまでに身につけたものはそれに加えて「ビジネスとして成功させる」ことだった。
しかしやはり何と言うか、誰も先人がいない道を切り拓く者の宿命というのもあるが、数回に一回は大ゴケする。売れるはずだったのに予想以上に売れてないものがたくさん。
アップルという会社は長年の間あまりにも独自ワールドを展開しすぎていて、自身が見えにくくなっているのではないか。
今回もそうだった。
世界企業アップルが何かを発表すると、その影響は計り知れない。
だからたくさんの人が注目していたし、注目させるマーケティングだった。
しかし本日午前0時、フタを開けてみれば……。
これだけのことである。アップルは世の中からいま何を期待されているのか分かっているのだろうか?
ちなみに「ビートルズがiTunesにやって来た」ことの何がニュースなのか、分からない人のほうが既に多い時代になっていると思う。
話は30年以上前に溯る。
ビートルズは1968年にApple Corpsという名前の会社をイギリスで設立した。
対して米アップル(2007年からApple Inc.という名前に変更したが当時はApple Computer, Inc.)は1976年に創業、Apple Iを世に送り出し、資金を獲得して翌1977年に法人化した。
その翌年の1978年、英Appleは米Appleに対して、商標権侵害を訴えた。この訴訟は3年後の1981年に決着。米Appleが和解金8万ドルを支払うと同時に、米Appleは音楽業界へ参入しないという条件がつけられた。
それから色々とゴタゴタがあり、結局今日この日まで、英Appleと米Appleは音楽の権利に関してすっきり和解できたとは言えないままだった。
今回ビートルズがデジタルメディアで購入できるようになったのは、世界で初めてのことだから、それはそれでニュースなんだけど、なによりもこのニュースは双方のApple社にとって記念すべき日であって、我々エンドユーザーにとっては、ビートルズの楽曲を手に入れる方法がひとつ増えただけにすぎない。
しかも、既にデジタルリマスター版のアルバム全部持ってるし!
だいたいビートルズファンならいまさらiTunes Storeで買うこともないでしょう。持ってるだろうから。今までビートルズを知らなかったとか知ってたけど曲は持ってなかったという人たちにはいいんだろうけどね。
ま、ひとつの時代が終わって、新しい時代がやってきたんだな。
なんか物凄い前振りされて、肩透かしを食らった気分だけど。
しかしこれが、アップルクオリティ。
こんなふうに、「期待→賞賛」あるいは「期待→落胆」を繰り返し経験させられるのが、アップルファンなのだった。
そこだけは30年変わってないなw
コメント
[…] This post was mentioned on Twitter by Fave-Ian, uzra – Hiro 884. uzra – Hiro 884 said: New blog posting, 非常にガッカリ – http://bit.ly/9FviKY […]
でもまだまだビートルズの楽曲を耳にする機会は多くあるし、ビートルズを知らない若者がビートルズを聴くための手段としては、気軽でいいんじゃない?
試聴とか出来るんでしょ。
@Chabo
たしかに、若い世代はもうビートルズなんて知らない人が増えてるみたいだしね。