わが第二の故郷ケンタッキー州に竜巻が来て甚大な被害を受けている。
ケンタッキーには僕のたいせつなもうひとつの家族が住んでいる。今回、竜巻は家族の住む地にはタッチダウンしなかったのだが、隣の郡に降りた。
1990年のケンタッキーで、僕は実際に竜巻を体験した。
家族全員で竜巻の到来に備えた。家中の窓を閉めて換気口を塞ぎ、窓枠にタオルを詰めた。少しでも隙間があると気圧の関係で家が潰されるからだ。
深夜の地平線には横並びに数百の稲妻が断続的に走り、雷の灯りで新聞が読めるほどにわたしたちの街を照らした。
ローカルテレビ局が示す竜巻の行方を、家族みんなでリビングに集まって、夜通し固唾を飲んで眺めていた。アメリカ中南部であるこの地域には、日本の台風のように竜巻がよくやってくる。そのためこの地域の家には地下室が当たり前のようにある。竜巻が来たら地下室に非難するのだ。
豪雨がやってきて、いよいよ近くまで竜巻がやってきていることを感じた。竜巻は群れのように幾つもが塊になって、空高いところを移動することや、それがたまに地表に降りてきて地面に触れて(タッチダウンして)被害をもたらすこと、それによって竜巻の勢力は少しずつ弱まることを教わった。
竜巻が去っていった翌朝、街は恐ろしい様相になっていた。テレビでもそれを伝えていた。民家が立ち並んでいた人口密集地にタッチダウンした竜巻は、その軌跡が辿れるほど真っ直ぐに、全てを破壊していた。家屋は根こそぎ徹底的に潰され、森の木々は吹き飛ばされ、自動車はあり得ない場所で逆さまになっており、人間だけでなく牛や野生動物まで遠くまで吹き飛ばされてしまっている。
大型の竜巻は、風害の中でもピンポイントの破壊力において地球最大級なのかもしれない。
あちらの家族に連絡を取り、無事を確認した。それをきっかけに、あちらの兄弟が、僕と何かを起こすことにまだ情熱をなくしていないことが確認できた。それがとても嬉しかった。
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