地球のゆくえ

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わたしたちが戦う相手は他人でも宇宙人でもない。自分自身だ。

無抵抗主義を貫く人は抵抗主義者から「甘えた平和主義者」のレッテルを貼られる。

右も左も関係ない。人類は長い歴史の中で同じ過ちを繰り返してきた。歴史という記録がひとつの文明の中で残されているうちにそこから学ぶか、それともまた同じ繰り返しをするのか。

人は変わらないという人がいる。無責任にもほどがある。確かに人は変わらない。しかし純真無垢で生まれた赤ちゃんの誰一人として、不要な殺戮をしてまでエゴを通そうとする者はいない。

「虹の戦士」(Warriors of the Rainbow)より引用:

「ですからなぜ、偉大なるこの地球のスピリットは、われわれの土地を白人が奪っていくのを許したのですかとさっきから聞いているのです。どうか教えてください、いちばん古い母親でもあるおばあさん、お願いです」

アイズ・オブ・ザ・ファイアーは再び声を立てて笑ってみせた。

遠くの谷間で鳴る雷の音のようにも、その笑い声は聴こえた。

彼女は口を片手で隠して、身体をゆすって笑った。

「わたしがこれまで聞かせてきたようなこうした話で、必ずやお前も理解するに違いない。
昔、大変に前のことだが、年老いた賢者たちが、なぜ白人がここへ送られてきたのか、わたしに教えてくれたことがある。彼らはこう言っていた。
生きとし生けるものの偉大なるハート、グレイトスピリットのおぼしめしで、彼らはここに送られたのだと。
白人は白人だけしかすんでいないところからここに来た。
彼らはここへ、この地へやってくる必要があったのだ。
彼らはここで、ほかの人種のことを学び、彼らと共にこの地で生きることを学ぶために、ここへ送られた」

老婆は続けた。

「だからある日、インディアンが昔のスピリットを取り戻したあかつきには、インディアンは白人たちに、互いに愛しあうとはほんとうにどういうことか、あらゆる人間を愛するとはどういうことかを、今度は教えることになるだろう。
白人の徹底した征服によって、今のインディアンはうちひしがれ、卑屈になり、貧しさにあえいでいる。
しかしだからこそわたしたちは、自分たちだけよければそれでいいというような、へんなプライドに染まらずに今日まで来れたとも言えるのだ。
インディアンはいつでも偉大なる覚醒の日のために準備ができている。そしてその日が来たときには、今度はインディアンが多くの者を目覚めさせるのだ」

「昔の年寄りたちはよく夢のなかでインディアンの行く末を見たものだった。
彼らは、わたしたちがやがて大変に悪い時を迎えることをあらかじめ知っていた。
インディアンの多くがスピリットを失うことも知っていた。
白人のいろいろな宗教によって、人々がとめどもなく分裂を繰り返していくことだってわかっていた。
やがてインディアンはみんな白人のようになって、ああした変わり者たちが成功と呼ぶものを求めはじめるだろう。
しかし、インディアンはいつの日にか目覚めはじめると、年寄りたちはわたしに話してくれたのだ」

「あのとき、おそらくあの人たちにはすでにわかっていたのかもしれない。白人たちがあまりに個人的な快楽を求めるあまりに、いつしか人生で大切なものを省みなくなることが。そのときはじめてインディアンたちだってはっきりと知ることになる。昔ながらのああしたスピリットのある暮らしが、どんなにか素晴らしく、かけがえのないものであったのかを」

「ところが昔の賢者たちが夢で見たのは、これだけではなかった。インディアンが一人残らず白人よりも馬鹿になったように見える日が来ることを見た者もいた。
しかしそうなったときにはじめて、そう、インディアンがみんな昔の日々のことを忘れて、ほうけはじめたまさにそのときに、東の方より一本の偉大なる光が差し込んでくる。
その光は何人かのインディアンのハートにも届くはずだ。火は大平原の野火のごとく勢い良く燃え上がるだろう。彼らは人種と人種の間に愛を拡げるだけでなく、それぞれ異なった宗教の間にも愛を拡げて行く」

「その光を、お前は見つけなくてはならない。
わたしの息子の息子のそのまた息子よ、
わたしの愛する者よ、
お前があの山の頂でこころからヴィジョンを望み、
そしてそれが叶えられれば、
そのヴィジョンのなかで、
お前はそれがどこにあって、
いかに手に入れたらよいのかを、
きっと学ぶはずだ。
お前の探しているものは、
とてつもなく大きく、
しかも素晴らしいものだ。
世界中のすべての人が、その中に安息の場所を見つけられよう。
その日が来たときには、
ここにあるいくつもの丸い円は、
理解と調和の大きな丸のもとに集まるのだ」

老婆はそこでひとまず話を切った。

彼女と少年の二人の見つめる東の空に、なにかを象徴するかのように、見事な虹がひとつ大きくかかっている。

二人はしばらくそうやってその虹を眺めていた。

やがて老婆が、偉大なる曾祖母が、また口を開いた。

「虹は、すべてのもののなかにおられるあのおかたからのメッセージだ。
すべての人間がひとつの家族のようにつながることを、虹は教えている。
さあ、あの山の頂にお行き、わたしにつながる愛しい者よ。
どうやったら虹の戦士になれるか、

行け、

行って学ぶがよい。

愛と喜びをみんなの間にひろげることだけが、
この世界の憎しみを理解と優しさに変えることができる。

この世からいっさいの戦争と破壊をなくすために、
残された道はもはやそれひとつしかない!」

組織という幻想に甘えたところで何も産みはしない。わたしたちは矮小で弱く、どんなに長く生きてもたったの100年そこそこしか与えられていない。その短き人生を精一杯生きる。幸せに生きる。そのために必要なことは他者への抵抗ではない。

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