お前はね、長男だからいずれこの家を継ぐんだよ。
恥ずかしいことはしなさんな。
――
家計図を見せておくね。ここに入っているから。
あなたのお爺ちゃんはね……。
お婆ちゃんのお父さんはね……。
お父さんはね……。
――
あなたは長男なんだから。
――
やればできるんだから、頑張ってね。
――
やればできたのに。
どうしてやらなかったの。
――
お前の親になって、正直後悔している。
妹や弟と比べてみろ。
わかるだろう。
お前にだけこんな苦労してる。
金もかかってる。
――
あんな名も知れない学校に行くなんて、恥ずかしい。
行かないほうがマシかもしれないね。
――
お前が学校を辞めたのは、起きるべくして起きたことだ。
だから初めから反対したんだ。
――
お前は今、自分で稼いで生きていくこともできていないし、この先どうするかも決めていないようだから、北海道にいる知り合いの農場で働く手配をしておいた。来週から行け。
――
お前はせっかく手配した農場の話からも逃げた。お婆ちゃんから話があるらしいから行ってこい。
――
あなたのお爺ちゃんは偉い軍人だったんだよ。
いま地連の人がくるから、基地の見学でもいってらっしゃい。
――
こんにちは、陸上自衛隊、地連の○○です。○○君ですか。お祖父様には生前本当にお世話になりました。
今日は入間基地と地連の事務所へ行きましょう。
陸、海、空のどれが好きですか。
私は、○○君のお祖父様と同じ陸ですが、お勧めしますよ。
――
これは簡単なテストですが、軽い気持ちで受けてみてください。
なに、受けたからといって入隊しなければいけないわけじゃないんですよ。
本当に簡単ですから。
――
お前は農場も自衛隊も全部だめにした。
知り合いの店で働くように手配したから、そこで働け。
もう帰ってくるな。
――
やりたくてこの仕事を始めたんじゃないのかよ。
あなたを預かった以上、勝手に辞めさせるわけにはいかない。
――
何をいまさら?
死にそうなら、死ねば?
――
お前、終わってるな。
――
お前、うつ病じゃないの?
一度医者に診てもらったほうがいいよ。
――
記憶がなくなるなんて、随分都合のいい脳味噌してるね。
――
お前のことは、子供の頃から一度も信用したことない。
――
世の中には、生まれつき悪い奴がいるんだ。
お前がそうだ。
見ればすぐわかる。
そういう奴はもう、どうしようもない。
生まれつきなんだから。
お前、小学校くらいの頃なんて、万引きとかしてたんだろ?
――
お前はあの店を飛び出して、今まで一体何をしていたんだ。
そんなその日暮らしで食っていけると思っているのか。
これはお前の通帳か。
金なんか持っていたらまた逃げ出すだろうから、これは預かっておく。
もうあの店には戻さない。迷惑をかけたからな。
代わりに、別の店にお願いしておいた。
今度の店は厳しいぞ。覚悟しておけ。
――
やあ、○○君か。○○先生には相当ひどい息子だって色々聞いてたけど、なかなかいい顔をしてるじゃないか。
先生に言われて分かってると思うけど、あなたが逃げ出さないように給料は全部こっちで預かるから。
毎月、小遣いだけ渡す。1万か2万もあれば十分だろう。
――
それで、今度はいつ逃げ出す計画をしてるわけ?
――
寮の鍵は君に預けていないし、荷物は寮にあるし、逃げられないよ。
――
今までのいろんなことを先生から聞いているから、あなたには厳しくしなければいけないと思ってる。
――
ここを逃げ出したら、お前は一生何をやっても逃げ出す人生になるぞ。
――
いいよ、しばらく泊めてやるよ。
荷物、何も持ってないの?
――
ワンルームですか。
保証人がいなければ部屋を借りることはできませんよ。
――
いつまでうちに居候してるつもりだ?
――
仕事は明日からでいいかい?
寮は2人で1部屋だから、共同生活だということを忘れずに。
――
いい加減にしろ。
金はまた預かっておく。
――
居場所がバレた。
もうここにはいられない。
――
研修、受けてみたら?
――
「お父さんはもう、家にはいません。頼むから一度帰ってきてください」
――
いろいろ書いてみても、肝心なことが、書けない。
意味なし。
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