暗闇のスキャナー

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文字や絵を読み取るスキャナーではありません。あしからず。

フィリップ・K・ディックの名作「暗闇のスキャナー」をブクログに登録しようと思いAmazonで検索してみたら、何故かタイトルが「スキャナー・ダークリー」でヒット。これはもしやと思いググってみたら、案の定、映画化することになっていたのでした。しかも今年の秋。もうすぐではないですか。

ディックという作家は、そしてその中でも「暗闇のスキャナー」は、非常に思い出深い作品なのです。

忘れもしない18才の夏、僕は水道橋で友達との待ち合わせに早く着いてしまい、駅のそばにあった旭屋書店で時間をつぶしていました。

そこで何故か、普段寄り付きもしないSFコーナーに足を運び、タイトルが気になってしまい手にしたのが、暗闇のスキャナーだったのです。

冒頭の何ページかを立ち読みしてすぐに購入を決断。それまで本といえば純文学や詩や推理小説しか読まなかった僕にとって、かなりのショックだったのでした。

それまでSFなんて活字で読むものじゃない、映画館のスクリーンで楽しむ娯楽だと決め付けていたのです。

そこから僕のディック熱がはじまりました。書店に行くと最初に足を運ぶのは早川文庫、創元文庫のコーナー。サンリオ出版などの絶版ディック作品を探して、あらゆる古本屋や図書館も巡りました。そこで初めて、図書館にも意外とSFが揃っているのだという事実も知りました。とうとう原作まで手を出して、洋書を扱う店にもよく足を運んだものです。(当時洋書を読んだことが後になって役に立つとは思いもしなかった)

ディックの作品をあらかた読み尽くしてしまうと、僕は「読みたい」エネルギーをぶつける場所がなくなってしまいました。それで、他のSFにも手を出すようになりました。そして、作家を問わず、背表紙のあらすじだけを頼りに多くの作品に出会いました。SF古典からハードSFまで、あらゆるものを(ただし、どうしても好きになれなかったスペースオペラやファンタジー以外)。ハインライン、ホーガン、グレッグ・ベア、アシモフ、クラーク、フレデリック・ブラウン、ポール・アンダースン、H・G・ウェルズ、ジュール・ヴェルヌ、オースン・スコット・カード、ウィリアム・ギブスン、マイケル・クライトン、ブラッドベリ、、、挙げだすときりがありません。

そういうわけで、僕にとって暗闇のスキャナーという作品はSFへの扉を開いてくれた記念的作品なのでした

ところで、「スキャナー・ダークリー」というタイトルは全然良くないと思いませんか。

「暗闇のスキャナー」のほうがいいのに。

最近の洋画は、そのままカタカナにしてしまうことが多いですね。洋楽のタイトルもそうですけど。

味のある翻訳というものを目にする機会が減りました。

どうせなら「ブレードランナー」のように、まったく違うタイトルを与えてあげればいいのに、と思います。

(ブレードランナーはディック原作です。原題は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」 Do Androids Dream of Electric Sheep? です)

ディックの作品はこれまで何度も映画化されてきましたが、あまり大きなヒットは無いですね。

それは、ディックの世界観は、他のどのSF作家のものよりも映像化が困難だからだと言われています。確かに。しかし「暗闇のスキャナー」は、ディックの作品の中で一番映像化しやすいのではないでしょうか。

僕は、ディック原作の映画が出るたびに、なぜこの「暗闇のスキャナー」が映画化されないのだろうかと、ずっと疑問に思ってきたのです。僕が出会った最初のディック作品がこれだったことは、ある意味ラッキーだったのかもしれません。他の(とくに晩年の)ジャンキーで難解な作品に最初に触れていたら、これほどSF小説に入れ込むことは無かったかもしれません。(そのほうが良かった?)

ちなみに、本作は1977年の作品です。他の作品がそうであるように、そんな時代に書かれたものだとは到底思えない斬新さがあります。

映画、必ず見に行きます。

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