千葉県、列車の旅

体も心もリフレッシュするために、普段やらないことをやろうという話になり、 あえて何も計画を立てずに、ただ「ローカル線で日帰り旅行」をテーマに、千葉県の上総方面へと向かった。 今回は長いので、ここで区切っています。 続きを読みたい方は以下のリンクをクリックしてね。

房総への玄関、千葉駅に朝早く到着した。

▼千葉駅の改札横に掲示してあった路線図。手作りだ!
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千葉駅に到着後、まずどこから始めるか話し合う。 候補は、経営不振がTVで紹介されて一気に有名になった銚子電鉄と、五井駅から走っている小湊鉄道、それから大原駅から走っているいすみ鉄道だ。

銚子電鉄は有名になっちゃったし路線距離も短いし、どうやら小湊鉄道といすみ鉄道は上総の中央で合流しているみたいだから、とりあえずの目的地として、小湊鉄道に乗るために五井へ行ってみることにした。

このとき僕はまだ、素晴らしくドラマチックでノスタルジックな旅行がこの先待ち受けているなんて、夢にも思っていなかった。
だって小湊鉄道の起点であるJR五井駅は千葉駅からたったの20分、東京駅からでも1時間以内と、東京への通勤も可能なくらい近い場所。
こんな近くに、都会暮らしに慣れてしまった人たちが感動するような何かがあるとは思えなかったからだ。また、千葉県のたかが知れた大きさの半島に、秘境どころか、ほんとうの田舎暮らしなんてもう残っていないだろうと考えていたのでした。

小湊鉄道(小湊鐵道)が経営している小湊鉄道線は、千葉県市原市の五井駅から夷隅郡大多喜町の上総中野駅までを結ぶ鉄道で、路線距離は39.1キロ、非電化・単線の路線で近代化されていないため、首都圏にありながら駅舎や車両など古くからの雰囲気を残している。

しかしその予想は、五井駅で裏切られることになる。もちろん良い意味で。

▼五井駅のきっぷ売り場。JRと小湊鉄道のきっぷが買える。
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五井駅で、JRのホームに隣接した小湊鉄道のホームへは、改札を通らずに移動できる。しかし五井までしかきっぷを買っていなかったので、小湊鉄道のきっぷを買うため、いったん改札を降りた。

▼小湊鉄道の時刻表は、上の写真の右側の細長いほう。
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こんなに本数が少ないのか!しかも、半分以上が終点の上総中野まで行かない。
終点までの切符は1370円。1日フリー乗車券は1700円。
どうせ途中の駅で次の便を待つのなら、自由に出入りできるほうが得だから、フリーパスを買うことにした。
フリー乗車券は、小湊鉄道のホーム(階段の下)にある事務所で売ってる。
(改札を出た意味がなかった!)

▼1日フリー乗車券
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そしてこれが、小湊鉄道だ。

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1両編成!

電化されていないので、ディーゼルエンジンの音がブルブルいってて、なつかしい油のにおいがする。 ちなみにこれは、10:09五井発の、上総牛久行。これで上総牛久まで行っても、ここ(五井)で上総中野行の便を待っても、結局上総中野に着くのは同じ時刻なんだけど、せっかくなら上総牛久を散歩でもしてみようということで、これに乗車することにした。

ここで、ひとつ疑問が。
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ひとが乗ってるんだけど、ドアがしまってる。
しかしドアに取っ手がない!?!?

……よくみると、ドアの下のほうに取っ手が!

寒い地方ではよくあるけど、自動ドア解除してあって、自分であけたり閉めたりして出入りします。長い時間止まってる駅だけだけどね。

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▼上総牛久駅が見えてきた
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上総牛久までの約30分の道のりは、平野を突っ切るような直線が多かった。よくある田舎の風景。違うのは、やたら懐かしい感じのする駅を通ってくることだ。自動車旅行に慣れてしまった自分にとって、これは強烈だった。

ちなみにあとで調べて知ったことだけど、五井からこの上総牛久までの区間は、ATCによる自動閉塞なので、本数が多いらしい。
閉塞って言葉も知らなかった。列車の正面衝突や追突を防止するために、ひとつの区間に2つ以上の列車が入れないようにする仕組みのこと。
つまりATCを使っている五井~上総牛久間は、閉塞区間が小さいため、本数を確保できる。上総牛久よりも奥は、スタフという方式の閉塞方式なので、極端に本数が減る。たとえば、休日用の時刻表をみると、午前中に五井駅を出発する便は7本。そのうち、五井を6:29に出る始発と11:00発の2本は養老渓谷(上総中野の1つ手前の駅)行き。上総中野まで行くのは、2本だけ。残りの3本は、上総牛久で折り返す。

さて、上総牛久より先に行くためには、11:28上総牛久発の養老渓谷行きを待たなくてはいけない。まだ1時間くらいあったので、牛久の駅周辺を散歩してみることにした。

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都心でもよく見かけるNPCのコインパーキング。
よく見ると、1時間300円じゃなくて、24時間で300円!
1時間100円で、最大300円って……3時間までしか課金されないのかっ!
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「きしゃにちゅうい」

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「れっしゃがきます」

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反対方向の列車(五井行き)がやってきた。ということは、単線だからこっちももうすぐ来るはずなのである。

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きたきた。やっときた。養老渓谷行き。
しかしこれに乗っても、上総中野までは行ってくれないのである!あと1駅くらい、行ってくれてもいいのにね。

このとき、1駅くらいなら歩けるかな?という淡い期待もあったのだが、田舎の1駅、しかも山道はそう優しくないという事実にあとで気づくのであった。

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女性の車掌。最初に乗った便もそうだった。
これも後で調べて知ったことだけど、最近女性運転士もデビューしたらしい。

観光客はカメラを持ってるからすぐに分かるのだった。ふたりそろって一眼レフをもっていたカップルがいた。かっこいいなー。たのしそう。

里見といえば、八犬伝!

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無人駅では、車掌さんが車両から降りて切符の回収をします。
乗ってきた人に車内で切符を売るのも、車掌さんのお仕事。

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養老渓谷へ向かう線路は、山を切り崩した切通しだったり、トンネルがあったり、谷間を通る橋を通ったり、五井から牛久までの間とは違った雰囲気になってきます。
東京からほど近い場所に、こんな体験ができる場所が残っているとは、ただただ驚くばかりです。
日本の本当の姿ってこうなんだよな、きっと。
ほとんどの場所がこうなんだ。首都圏だけ、異常に加熱してるだけなんだな。

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上総大久保の駅舎に描いてあったトトロの絵。

トトロはいいけど、横にいるサツキは全然似てないよ!

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養老渓谷到着。車で来たことはあったけど、交通手段が違うだけでこんなにも違う感動が味わえるとは!!

ものすごく遠い場所に来たなぁ、という気持ちになります。

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無計画にここまでたどり着いた我々は、とりあえずこのマップで近くにありそうな「観音橋」という場所を目的地にしようと決めた。
なぜか歩くのが前提になっていたのが、いま思えばおかしい。バスがあるのに!

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こんな道をただ歩く。歩く。
車だとあっという間に通り過ぎていく、車窓からはよく見たことのあるような風景。
途中で気になる看板を発見。

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これも自動車だったら気づかなかったか、気づいてもわざわざUターンして行かないだろうな。どうやら手作りのパン屋さんらしい。ちょうどお腹もすいてきたところだったので、行ってみることに。

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手前の建物がパン屋さん。奥が、欧風料理のレストラン。店内はとってもお洒落でした。
店主の方が訪問したと思われる場所のアルバムがカテゴリ別にファイルしてあって、見られるようになってました。「世界のパン屋 1」とか「イスラム教の国々」とか。きれいな写真ばっかり。素敵な生活してるなあ。
パンとコーヒーをテイクアウトして、食べ歩き。途中、ウォーキングしてたおばさんが通りすがりに、「おいしそうなコーヒーのにおい!」と声をかけてくれました。
なんだこの素敵な時間は。
コーヒーはドリップしたばかり。パンは手作りでもちもち。どちらも最高の味でした。

さて、パンをほおばりながら田舎道を歩くふたり。

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思わずスタンド・バイ・ミーを歌いたくなってしまう光景ではないですか。
本当にここは千葉県なのか。
どうやら僕は千葉県を大きく誤解していたようです。
(さだまさしの独り言のように読んでください)

マスクを買うために寄った、駅前のスーパーのおばちゃんが「道をまっすぐだよ」と教えてくれたので、ずっとまっすぐ歩いてきたのですが、いっこうに観音橋が見えない。
そろそろ引き返そうか?次の上総中野行きは1:21だし、もう時間ないし。って話してたら、みえてきた。
あれがきっと観音橋に違いない。

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出世観音というのですか。
とくに出世したいとかいう立場でもないのだけど、いってみよう。
時間的にも、今日の旅行の最大の目的地はここなのかもしれない。

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太鼓橋をわたり、急で細い階段をのぼり、短くて狭いトンネルを抜け、また階段を上ると、そこにお寺はありました。

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出世観音像。

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由来が書いてありました。

あとで調べたことも含めて書くとこうなる。

いまから遡ること800年。治承4年(1180年)8月17日の夜、源頼朝は、妻政子の父である北条時政や土肥実平たちと共に、平氏打倒の名の下、平氏一族である伊豆目代山山木兼隆を攻めた。以仁王の命により、東国支配の権限を与えられたと主張していた頼朝は、石橋山(今の小田原のちょっと南)へ軍を進めた。それに対し、大庭景親は頼朝打倒のため、武蔵、相模の武士に出陣を呼びかけた。これが石橋山の合戦。
頼朝は、数の上でも圧倒的に勝る平家方(大庭景親)に惨敗。(以仁王の乱)
わずかに残った仲間と共に土肥杉山の洞窟に身を隠した頼朝は、その後土肥実平の助けにより、真鶴から安房(千葉県)に逃れ、ここで三浦氏一族らと合体し、ふたたび平家に対して反旗を挙げ、天下を平定することになる。

つまり、頼朝由来の観音様なのでした。

さて、参拝も済んで次はどこへ行こうかという話に。この場所からだと養老の滝まで、約7km。中野駅までも結構あるという。

それじゃまず、バスをさがそう!

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「手をあげれば とまります」
すごいバスだ。で、全然くる気配がないし、バス停に時刻表も書いてないから、停留所に書いてあった電話番号に電話してきいてみた。
丁寧に教えてくれた。
「バスは手をあげればどこでも止まる(バス停にいる必要はない)」
「トンネルにいると見逃して行ってしまうかもしれないから注意」
「老川十字路というところまでいけば、もっとバスが多い(らしい)」
「現在地にもバスがもうすぐ通るはず」

言うとおり、バスがきたのですが。会話に夢中になってて、気づいたときには通り過ぎてしまいました!!
仕方がないので、中野駅/養老渓谷方面へ歩くことに。
歩くこと3kmくらいかな。
上り下りもあって、トンネルもあった。

そして、老川十字路にたどりついたんだけど。

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バスが多いっていう言葉に期待しすぎてた!
1時間に1本もない!

さて、この老川十字路で右に曲がれば3kmくらいで滝。
左に曲がれば、?kmで上総中野駅。
十字路にあったスーパーのおばさんにきいてみたら、中野までは車なら5分くらいで、歩ける距離らしい。
かみさんの足が限界に近いので、中野方面に向かうことにした。

と、ちょっと歩いたそのとき。

「バスきた!」中野行 と書いてある!
教えてもらったとおり、手をあげてみる。
しかしバスに手をあげて止まってもらうのは、とても畏れ多い感じがする(笑)
ほんとにとまってくれるんだろうか?という心配をよそに、バスは僕らの目の前に止まってくれたのでした!
さっき電話していなかったら、バス停じゃないこの場所でバスを止めようとも思わずに、バスが通り過ぎていくことにがっかりしていたことだろう。

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後乗り、前降りのバスで、整理券方式のワンマンバス。中野駅までは250円でした。
ちなみに貸切状態!都会のバスより広い、なつかしい感じのバス。
バスに乗りながら、「この距離を歩いたら日が暮れていた」ことに気づくふたり。
日が暮れたら、もう景色を楽しむことはできないからね。
このバスを捕まえることができたかどうかが、この旅行の成否を分けることだったと、あとで気づくのでした。

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上総中野駅に到着!時刻は、2:30をちょっと過ぎたくらいだった。
上総中野は、小湊鉄道といすみ鉄道が接続する駅!右から伸びてきて、この駅で行き止まりな線路と、左から伸びてきて、この駅で行き止まりな線路がある。そこをバイパスする線路も敷設してあるんだけど、いろんな理由があって、列車の相互乗り入れはしていないそうだ。

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大原行のいすみ鉄道が来た!

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ワンマン!?バスじゃないかこれは!同じローカル線でも、ぜんぜん雰囲気が違うんだなあ。

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こ、このサザエさんは!!よいサザエさんだ!
実家にあった長谷川町子さんが描いたサザエさんのマンガの絵だ!
まるで違う時代に来てしまったような錯覚に陥る。

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整理券方式!
料金箱!
つまり駅で切符は買わない、ほんまもんのバス方式なんですね。
レールの上を走るバスだこれは。

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上総中野~大原、620円。一日乗車券は1000円だそうです。

途中で降りる予定はもう無かったので、一日乗車券はやめました。

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右に見えるのが、小湊鉄道の線路。左は、両路線を接続するバイパス線。

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車内に設置されていた、ごみ入れと消火器。

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いよいよ出発!

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このあと、途中の駅で地元の高校生が大勢乗ってきたので、なんかちょっと恥ずかしくて写真とかとれなかった。
しかし、高校生たちの姿に感動すら覚えました。
茶髪やピアスの子はひとりもいないし。みんなちゃんと制服着てるし、かかと踏んで靴はいてる子もいない。
女子を見てて感想。「そういえば高校生の頃って、これくらいふくよかだったよなぁ」
都会の高校生は、僕たちの時代と比べて食べるものが変わって体系が欧米化したわけではなく、過度のダイエットによってやせ細ってるだけなんだと実感しました。それくらい健康的な子供たちばかりで、地域の健全さが残っているんだな、と強く感じました。
列車の職員と高校生が知り合い同士だし。狭いコミュニティで大人の目がきちんと行き届いている、良い社会なんでしょうね。
(そりゃ、住まなきゃ見えないことも色々あるでしょうけど)

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大原に到着。
JRのターミナル駅なので、久々の都会っぽさを実感するかな?と思っていたら、

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まだ早かった!

しかし、今日の僕たちにとってはこの駅が現実への玄関なのだった。

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ちょうど僕たちの旅の終わりを待っていたかのように、日が暮れ始める。

房総の山のむこう側に太陽が沈んで行き、あたりがあっという間に夕暮れ色に染まったのが印象的だった。

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旅の締めくくりは、外房線を走る特急、新宿わかしお。
5両編成でした。自由席は、3~5両目。
意外にも客が多くて、途中では立っている人もいました。びっくり。
普通列車だと千葉まで2時間かかるところを、こいつだと1時間。
のんびり帰りたいという気持ちもあったけど、わかしおに乗ってみたかったので、これにした。

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こんどは、紅葉が美しくなるころに行ってみたいと思いました。

すばらしい休日でした。

最後に、道のりを記したマップを。

2008年1月26日 旅行(地図)

Hiro Hayashi

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  1. 素敵なプチ旅行だね。去年11月から12月にかけて地方都市に出張したとき、こんな感じに近いものがありました。大きな都市から1時間1本くらいの単線・1両編成に乗って数十分で「ここはいったいどこだ?何もない!」という感じ。すごいのんびりした空気をたった一人で一ヶ月も十分味わって、首都圏の都会生活にもどると、すごいギャップがあって体が追いつかなかった。ほんとに気持ちが落ち込んで苦しんでたよ。大都会ってほんとに考え物だね。

  2. だらだらと長い記事を読んでくれてありがとうヽ(´ー`)ノ

    地方都市に出張・・・職を変える前はよくあったんだけど(四国、青森、岩手、鹿児島など)、いまは全然ないのですよ。
    かわりにインド出張があるけどw

    ほんとに田舎と都会じゃ流れる時間が違うよね。
    都会にいると、一日があっという間に過ぎちゃう。
    そのくせ、有意義に一日を過ごしたかというと疑問。
    インドの長い出張も、デリーとかチェンナイとか、1千万都市なんだけど、東京が失ってしまったものがまだあります。
    だから帰ってきたときも、わいちゃんと似たような心境になります。
    ほんと、人生という単位で考えると都会生活ってどうなんだろうと思うよ。
    あと、田舎に行くと、自分が専門の仕事以外、なにもできない人間なんだなぁとつくづく思う。

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