Mac版しか用意されていない音楽制作関連のソフトはたくさんあるけれど、Windows版しか用意されていないものは数少ないのです。なぜなら、多くのミュージシャンがMacを使っているからです。しかし世の中にはWindows版しかない音楽ソフトがあります。たとえば、
- CakeWalk SONARシリーズ(DAW)
- SONY Acidシリーズ(DAW)
- VOCALOID / VOCALOID 2 シリーズ
前者のふたつには歴史的な理由があってWindows版しか無いのだが、VOCALOIDシリーズがWindowsにしか対応していないのはどうしてだろうか。
capsuleとPerfumeの人気によって今をときめく中田ヤスタカも使っている、SONARやPro Toolsと並んでトップクラスで人気のDAW、Cuba se。その開発会社であり、業界標準を数多く作ってきたSteinbergを傘下に収めたYAMAHAのことだから、VOCALOIDをMac対応させるつもりが無いわけがない。
(ちなみにCubaseはWin/Macどちらでも使える)
その答えはYAMAHAのサイトにあった。VOCALOIDに関するFAQのトップに!
Q1. Mac OS には対応しないのですか?
A1. 弊社といたしましてもMacintosh の重要性は十分認識しており、早い時期に対応したいと考えておりますが、具体的な時期に関しては現時点では申し上げられません。
Q2. Windows 98 や Me には対応しないのですか?
A2. 申し訳ありませんが、Windows 98 や Me での環境をサポートする予定はございません。
多分だけどマーケティング的な判断でWindows版を先にやっているのだろう。
なにしろWindowsのほうがシェアがあるんだから仕方が無い。それにこのVOCALOIDというやつは一般人にまで売れてしまう化け物音楽ソフトだから、元からDTMや作曲している人たちだけをターゲットにしたソフトと比べて、Windowsユーザの比率が大きくなるのは容易に想像できる。
……だって、アニメイトに売ってるんだよw
間違いなく、VOCALOIDは使わないけどパッケージを記念買いしている人は少なくないはずだ。
前置きが長くなっちゃったけど、そういうわけでウチのルカさんは、Macにインストールできない。
しかしこの問題を回避する方法はある。素晴らしい時代だ。
VMwareという仮想OSソフトがあります。OSの中にOSをインストールできる、そんな感じだと思ってくれればOK。
これを使ってMacの中にWindowsをインストールして、そのWindowsの中にWindows用のソフトをインストールしている人が いるのは知ってた。この場合、DirectX絡みで問題が出ない限り、ほとんどのソフトが動作する。
しかしこの場合、仮想化ソフト(VMware Fusionなど)を購入したうえに、Windowsも購入しなくてはならない。
仮想プラットフォーム上にWindowsをインストールするので。
うーん金かかるなぁ。Windows 7が出たらメインマシンにも買わなきゃいけないしなぁ。
なんて思いながらいろいろ検索していたら出てきたのが、CrossOverというソフト。
- CrossOver Mac 8 Standard - ベクターPCショップ
- Windows Applications Seamlessly Integrated on Mac OS X - Mac Windows - CodeWeavers
このソフトは、なんとMacの上でそのままWindowsのアプリケーションを動かしてしまうもの。
純粋なWindows上で動いているわけじゃないので、動作するアプリケーションはある程度限定されてしまうけれど、なんとVOCALOIDがサポート対象の一覧に入っているのだ。
なにこれドンピシャじゃん。
ちなみにこういった試みは、はるか昔から行われていた。
まだWindows 95だか98が主流だった時代に、UNIXやLinuxの上で(正確にはUNIX上で動作するX Window Systemというグラフィカル環境で)Windowsのプログラムを直接動かしてしまおうというプロジェクトが発足した。
プロジェクトの名前は、WINE。(Wine Is Not an Emulator:Wineはエミュレータではない、の略)
当時それをワクワクしながら追っかけていた。
しかし当時はハードウェアのリソースも今とは比べ物にならないくらいショボかったから動作速度はひどいもんだし、何年もかけてやっと「Windowsのメモ帳が動作しました!」「ワードパッドが動作しました!」「ペイントが動作しました!ただし色パレットを開くとクラッシュします!」てな感じの進捗度だったので、そのうち追いかけるのをやめてしまった。
時は流れ、WindowsのバイナリをUNIXで動かすなんて技術よりも、いっそのことOSごと動かしてしまえばええやん、って考え方が主流になり、VMware、Virtual PCをはじめとするプラットフォームの仮想化技術が飛躍的に進歩した。
つまりエミュレータです。
これはハードウェアの高速化なくしてはありえない話だった。OSの上でOSまるごと動かすなんて、どんだけリソースを消費すると思ってるんだって話。
しかし仮想化技術が発達したおかげで、クラウドコンピューティングとかSaaSの動的なサーバ負荷分散の技術が飛躍的に発達したのはまた別の話。
なんでそんな話をだらだらと書いているのかというと、このCrossOverというソフトウェア、実は中身がWineなのである。
Wineもここまできたのか、と感慨深い気持ちに浸りながら、CrossOverをMacにインストールしてみた次第。
最初ちょっとハマりかけたけど簡単にいけました。(ハマった内容については同じことをしようとしている方々のために、後述しておきます)
ルカさんのCD-ROMを入れると、さっそく以下のようなウインドウが出てくる。
「インストール」をクリックすると、どのボトルにするか聞かれるので、XPのボトルにする。
あとは普通にインストールが始まる。まだCrossOverの画面。
MacのデスクトップにWindowsのインストーラー!これは面白い。
ドライブの選択は、デフォルトのままでOK。
よくみるとXマークがある。Quartzが使われているらしい。
無事インストール完了。
VOCALOIDを起動すると、おなじみオーディオインタフェースの設定が出てくる。
きちんとMacのCoreAudioが認識されているからすごい。
WindowsとMacの風味が混じった、なんともいえない画面だw
無事、エディタ起動。アクティベーションも問題なし。
ファイル選択のダイアログボックス。見事にWindows APIのコールを捌いてアプリケーションを騙している。
歌声ファイル(.vsq)を読み込んでみた。
再生もまったく問題なし。遅延も感じられず、サクサクと動く。
時間がとれたら今度は、Logicと連動できるかどうか試してみようと思う。
CrossOverのインストール後にハマった内容:
CrossOverをインストールしたあと起動すると、バックエンドでWindowsボトルが動作する。
このボトル、準備段階でCrossOverを終了してしまったら準備が中途半端な状態で処理中断してしまったらしく、次回からボトルが起動中の状態(初期化中ステータス)のまま、レインボーカーソルぐるぐるでCrossOver自体が反応しなくなってしまった。こうなるとCrossOverを強制終了するしかなくなる。CrossOverをいったん削除して再度インストールしても駄目。ボトルの実体がどこに入っているのだろうかと、CrossOverのアイコン右クリック→内容を確認で中身を調べていたら、英語のReadmeにヒントが。
「CrossOverを終了してもwineloaderというプロセスが残っている場合がある。アクティビティモニタでwineloaderがあったらkillするように」
確認したら、wineloaderのプロセスが3つあった。このプロセスを殺しても復活しまくる。よくみたらwineserverというプロセスもあったので、それも殺して、きれいにメモリ上から排除。
その後CrossOverを起動すると、まともに戻った。
コメント
初めまして!音楽制作をしているものですが、Mac OS X 10.6.5 を使用してますが、巡音ルカをCrossOverを使用してインストールして、DTN(cubase5)と一緒に併用はできないのでしょうか?
またなにか方法はないでしょうか?
@ヨコチン
初めまして、コメントありがとうございます。
巡音ルカはCrossOverを使うことでMac OS X上で動きますが、残念ながらReWire等を使用して、他のDAW(Cubaseも含む)と同期させることはできないようです。
MIDI OUT – MIDI INを介せばできるかもしれませんが、試したことがありません・・・。
なのでそれぞれ単独で使用しています。