創造力

仕事は適当に、がモットーです。なんてカッコよく言いたいところだけど、ようやくこのバカな耳も、ひとの言うことを聞くことを覚え始めたようです。思い返せば昔からよく言われてました。あなたは頑張りすぎちゃうから気をつけてねって。そう、あまりにも自分のマイナス面ばかり見てた若かりし時分には、どんなに仕事をしてもどんなに結果を残しても、もっと出来たはず、もっとうまくやれたはずと後悔ばかりが先走り、全く自分を認めてあげられない人間でした。

無理をすればその分キッチリとツケが回ってくる。自然の法則です。心も体もズタボロになるまで突き詰めるような仕事っぷりを繰り返した挙句、漸く心から認めるに至ったのでした。我ながら頑固です。

そんな僕が葛藤の末、とうとう「やりたくないことから逃げる」ことを実践しました。行動に移したということです。今まで仕事でアサインされたことにノーを言ったことのない僕が、ノーを出しました。決して後ろ向きな判断ではなかったと思います。携わってる仕事が4つもありましたので、そのうちのひとつから手を引くことにしたのです。しかも、一番思い入れの強い仕事から。なぜなら、一番ストレスになっていたからです。

40代も半ばにさしかかり、社会、会社、同僚、顧客などから求められるスキルが劇的に変化してきています。年齢は関係ないかもしれない。自分自身のマインドセットに変化があったために、モノの見方が変わっただけなのかもしれません。また、目標や方向性の変化も関連していると思います。

具体的には、今まではよりハードスキル的なところにフォーカスしていて、それが急激に「ハードスキルはあって当然、加えてソフトスキルが求められる」状況に変化し、さらにそれは変化して「ハードスキルは求めない。ソフトスキルが全ての価値」にシフトしてきています。

ここで言うハードスキル、ソフトスキルとは、ハードウェアやソフトウェアのスキルのことではありません。

ハードスキルとは学習やトレーニングによって獲得可能なスキルです。体系化され、ある程度は独学も可能です。IT技術の世界で言えばこれはプログラミング、ネットワーク知識、運用知識、設計、構築などのスキルや、そのベースとなるアルゴリズムの理解、数学や物理の基礎知識、論理思考、推論などが該当するかと思います。

ソフトスキルは交渉力、折衝力、リーダーシップ、調整能力、語学力など、より人間関係に特化したスキルです。

長年僕はハードスキルを飯の種にしてきましたが、現職に就くまでの間、自分のハードスキルの不安定さを弱点だと感じていました。つまり自分は全てのスキルが中途半端で、何も自信の持てるキャリアがないと自己評価していたのです。

しかし前の上司は僕自身が気づいていなかったハードスキルに気づきを与えてくれました。プログラミングや構築のような、よりハンズオン的なスキルの向上はもう求められておらず、高度な論理思考や、経験と知識を体系化してこそ実現できる的確な直感力があればこそ可能な技術仕様の理解力、さらにはハイレベルなシステム設計の力、コンサルティングや要件定義に使えるスキルが求められているということを示してくれました。

さらに突き詰めてわかってきたことは、どうやら世の中的にハードスキルを技術者の価値とみなす風潮は技術者のコミュニティ内に神話のように残っているけれども、この時代においてハードスキルは効率的に習得可能であるばかりか、ITにおいてはつい数年前の知識が陳腐化してしまうため、いつでもキャッチアップ可能であるということです。ただしキャッチアップするためにはある程度のセンスを磨く必要がありますが、それこそが若きエンジニアが積み重ねるべき経験で、スキルセットは極論を言えばなんでも良い、ということです。

また、ビッグデータの活用からディープラーニングまでを人工知能がカバーできるようになってきたため、ハードスキルを活用するシーンに人間が携わるチャンスは今後ますます減少していくでしょう。

一方で大切になってきているのがソフトスキル。これは業界を問わずに応用可能なスキルでもあります。

さらに言うと、ソフトスキルというものはただ経験を積み重ねたりコーチングやトレーニングを受けただけでは上手く身につかない、ということです。もちろんそれでも上手くやれる部分は多々あるのですが、絶対的な効率と信頼性に差が出るのが、結局のところ個々の人間性やマインドセットになるということです。個人が持つイデオロギーや性格、傾向、トラウマ、モチベーション、志向、価値観がものを言います。

先日「Unconcious Bias」についてのラーニングを受けました。そこで示されていたのは、人間が無意識下で決めつけてしまっている志向の傾向、つまり思い込みについてです。こうしたことは、チームで仕事を進めていく上でとても重要です。

全ての問題には複数の答えがあります。どの答えを出すのがより良い世界を実現できるのか、視点の多様性をどのように維持拡張していくのか。このあたりはハードスキルの先にあるソフトスキルの、さらにその先にあるものです。

今の僕が新しい仕事を引き受ける上で大切にしていることは、相互理解です。まず語学力がなければチームメイトと意思疎通もできないかもしれないので、英語が使えることは何にも先んじて一番大切なものです。素晴らしいアイディアがあっても、それが伝えられなければアイディアがないのと同じですよね。

その仕事に求められるハードスキルは、ほとんど考慮していません。これはハードスキルを無視しているわけではなくて、だいたいあたりをつけておけば、学習しながら遂行可能なケースが多いということです。さらに、関連技術に長けた技術者を確保すれば良いという解もあります。アウトソースすら可能です。

ソフトスキルの高いパフォーマンスを実現するために避けて通れないのが、いかにしてストレスフリーな状態に自分を持っていくか、ということです。昔のようにごり押しではどうにもなりませんし、プレッシャーのある中ではチームメイトや顧客が発信するマイクロメッセージを見落とす可能性を高めるリスクもあります。

程よく働き、楽しくこなす。これができなければ、クリエイティビティは実現できないのです。

……なんてことを実感しながら仕事をしている今日この頃でした。