トレーニング

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頭脳を鍛えることと、筋肉を鍛えることは相似だなあと思う。キューブカフェでいま起きていることを見ていて、さらにそう思う。

また、筋トレと脳トレと同じように、心のトレーニングも相似だ。心トレとでも呼ぼうか。

  • 肉体トレーニング - 肉体を強くする
    人間があらゆる活動をする上で、肉体の強さ(筋力や持久力など)がなければ、どんなに優れた頭脳や心を持っていても宝の持ち腐れになる。
  • 脳トレ - 頭脳を強くする
    人間があらゆる活動をする上で、頭脳の強さ(論理性やデータ活用力など)がなければ、どんなに優れた肉体や心を持っていても宝の持ち腐れになる。
  • 心トレ - 心を強くする
    人間があらゆる活動をする上で、心の強さ(精神力や志など)がなければ、どんなに優れた肉体や頭脳を持っていても宝の持ち腐れになる。

この3つの要素のバランスが崩れれば、偏って鍛えても効果が出ない。

たとえば「心技体」と称してバランスよく鍛えられるものをひとつ知っている。武道だ。武道は相手に勝つためにあるのではない。心技体を磨くためにある。激しい動作や長時間にわたる訓練に耐えられる肉体をつくり、自分の肉体をコントロールするための技を磨くために頭脳を駆使し、それらを統合して継続していくための忍耐力、礼儀を重んじる心を成長させる。

それで常々思っていたのは、たとえば肉体を鍛えるために構築された知識や体系は、頭脳や心を鍛えるためにも活用できるのではないかということだ。それを実践して効果を見てみたいと思ってきた。

キューブカフェ、日常、仕事などでそれを見てきた。

たとえば肉体のトレーニングには、「トレーニングの3原理」というよく知られた原理や、「トレーニングの5原則」というこれまたよく知られた原則がある。これは頭脳を鍛える上でも適用可能な原理原則だ。

トレーニングの3原理

1. 過負荷の原理

筋トレによって身体変化を求めるならば、一定レベル以上の負荷を与える必要がある。これを過負荷の原理という。

たとえば筋トレを始めたばかりなら、ウォーキングや階段昇降のような軽い負荷でも本人にとって過負荷にすることができる。それによって筋肥大、筋力向上のような身体適応が起きる。

身体で何が起きているのかというと、過負荷をかけることによって肉体の筋組織を壊す。壊れた筋組織は時間をかけて回復するが、壊す前よりも若干強くなるように回復するのだ。これはわたしたちの生命の仕組みで、「次にまた同じ負荷がきたときに対応できるように」、身体を統合しているためだ。

骨折した部位が治癒すると骨折する前より丈夫になることはよく知られているが、これも同じこと。

ある程度筋トレを積んで身体が発達したら、より強い負荷をかけていく必要があることはよく知られているが、それは上記のような仕組みがわたしたちに備わっているからだ。

ただし、一気に負荷を上げすぎると、身体破壊が「簡単には回復できないレベル」あるいは「回復不可能なレベル」になってしまう。これをわたしたちは「怪我」「負傷」と呼ぶ。

頭脳もおなじで、脳トレがたとえば認知症予防に効果があることや、計算力向上に効果があることなどはよく知られている。

そして脳トレを積み重ねて頭脳が変化していったら、それに合わせて負荷を上げていくことで、さらなる成長を期待することができる。

2. 可逆性の原理

筋トレをすると筋肉に変化が起きるのと同じように、筋トレをやめると筋肉は元の状態に戻ろうとする。これを可逆性の原理という。

身体で何が起きているのかというと、一定期間「過負荷」がないことによって生命システムが「ここまで筋肉がなくてもいい」という判断をして、筋肉を分解して減らすのだ。一体なぜそういうことになるのかというと、必要のない筋肉を維持するためにエネルギーを使っている状態は、生命維持にとってリスクであり、非効率だから。わたしたちはできるかぎり省エネで生きるようにできているから。

頭脳も鍛えれば成長するが、鍛えるのをやめれば元に戻ろうとする。そのためトレーニングを継続することが重要なのだ。

3. 特異性の原理

筋トレによって肉体はさまざまな変化をする。どこがどのように変化するのかは、どんな筋トレをどんな強度で、どれくらいの時間、どれくらいの周期で行ったかによって異なる。これを特異性の原理と呼ぶ。

有酸素運動と筋トレでは変化する場所が違う。

頭脳もおなじで、反応速度を上げたいのか、記憶力を高めたいのか、論理的思考力を鍛えたいのかなど、頭脳といってもいろいろあるので、どこを鍛えるのかによってトレーニングのやり方は異なる。

トレーニングの5原則

1. 意識性の原則

トレーニングを行うときには、意識をすることでさらに効果が高まるという原則。

何も考えず、言われたことをそのまま行うよりも、そのトレーニングにどんな意味があるのか、どんな効果をもたらすのか、どこを鍛えているのか、といったことを理解して、それを意識してトレーニングをすることで、トレーニングの効果が上がる。

これは肉体だけでなく頭脳を鍛える上でも重要で、誰かに指示されてやる場合と、自分で理解して意識的にやる場合とでは、脳のはたらきは全くといっていいほど異なる。

【無意識の例】

  • 正解のある与えられた問題を解く
  • 指示されたことを指示されたとおりにこなす
  • 何も考えずに計算ドリルや漢字ドリルを埋める

【意識の例】

  • 正解のない問題(たとえば世の中で解決されていない問題)を解こうとする
  • 自ら弱点をみつけ、その克服をどうしたらよいか検討する
  • 計算力向上のために計算ドリルをやる
  • より多くの漢字を覚えるために漢字ドリルをやる
  • 相手の言ったことを、違う言葉で表現してみる

2. 全面性の原則

身体の一部分だけを鍛えるのではなく、全身をまんべんなく鍛えると高い効果が得られるという原則。

鍛えている箇所が偏ると、関節や筋肉などに負担がかかり、それが怪我の原因になりやすくなったり、身体が歪んでしまったりする。

たとえばわたしたちは二足歩行するが、膝関節を制御する筋肉は数多くある。膝を曲げる筋肉、伸ばす筋肉、前後左右のブレを修正する筋肉など。また、二足歩行のためには全身のあちこちにある筋肉を使っている。バランスをとるために上半身も使っている。

頭脳もおなじで、たとえば高い計算速度を持っていても、それだけでは頭脳の使い道が限定されてしまうので、活用できる場面がそうそうないということになる。すると可逆性の原理によって、せっかく鍛えている計算力も頭打ちになるし、どんなに計算が早くても間違った論理にその計算力を使っていては、期待する結果は得られない。

3. 漸進性の原則

急がずゆっくり進めたほうが効果があるという原則。

たとえば筋トレにおいては、最初から高い負荷でやるよりも少しずつ負荷を上げていったほうが効果が高い。「アップ」によって筋肉や神経を目覚めさせて、軽い負荷で始める。そのまま続けていると身体が負荷に慣れてしまうので、効果が低くなってしまう。トレーニング内容を変えたり負荷を上げるなどして漸進していくと、高い効果が得られる。

頭脳においては、急ぐことによって論理性が破綻したり、見落とし・間違いが起きたりする。難しすぎる課題を解こうとウンウン唸りながら頭を悩ませても、トレーニング効果は低い。

4. 個別性の原則

トレーニングを行う人の個別性に合わせたトレーニングメニューが必要だという原則。

体力、筋肉バランス、強度、身体の使い方の違い、性別による骨格などの違い、年齢による老化具合の違いなど、さまざまな特徴をとらえて、それに合わせたトレーニングをすれば効果が高いということ。

頭脳を鍛える場合も同じで、個人の特性・特徴に合わせたトレーニングが必要。小学生が大学の参考書を読んでも効果は薄いし、大学生が小学校の教科書を読んでも効果は薄い。男女には実際に脳の構造や思考の特性に差があることも証明されている。当人がもつ知識量・計算力・論理的思考力・動作特性などを加味した訓練には高い効果が期待できる。

5. 反復性の原則

長い期間をかけて繰り返し、規則的にトレーニングを行うと効果が高いという原則。

急いでつけた筋力・脳力は、可逆性の原理によって落ちるのも早い。長い時間をかけて反復成長していくことによりゆっくりと成長し、身体に定着すると、それはなかなか失われなくなる。

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