漆黒の空にかろうじて見える、千切れ千切れに渦巻く雲。
暴風が吹き荒れる中、唯一の光源である月はその姿を気まぐれに見せたり隠したりしている。
闇の下に、永遠に広がるカオスの海。
どこまで深いのか、どこまで広がるのか、果たして陸地があるのか。
わずかに月光を照り返す水面からは、荒れ狂う波がぶつかり合う様子が垣間見える。
全てが混沌としながらも、叡智を超えた均衡をかろうじて保っている。
今にもどこからでも爆発しそうなエネルギーが、錯乱の一歩手前でその捌け口を探している。
風が、雲が、月が、海が、探り合うようにその鬱積した爆発力を持て余しつつ様子見をしている。
僕の中にあるカオスの均衡を景色にすると、こんな感じだ。
均衡を破るように、雷光が景色を作る。
雷光が一閃し、また一閃する。
混沌の世界にエネルギーが解放され、秩序が生まれる。
創造の瞬間だ。
カオスの海のあちこちに雷が落ち、至る所から理解不能な物体が重力に逆らって海面に浮かび上がり、それらはやがて海面を離れ、黒い海水を滴らせながら虚空に浮遊する。
無数にある物体はやがて嵐の中で渦巻き、無秩序に流れ出す。
物体と物体の間に時折、閃きという名の雷光が走る。
やがてそれらは、まるでそうなることがあらかじめ予定されていたかのように美しく合体し合い、ひとつの巨大な物体を成していく。
巨大な物体の周りにはまだ、稲光を伴いながら無数の小さな物体が巡っている。
ある時点までそれを眺めていると、突如、すべての物体の収まるべき位置を理解する。
理解したのは神か、自分自身か、あるいは、シナリオが存在するのか。誰にもわからない。
理解した瞬間、秩序が具現化する。
これがカオスの持つ力だ。
カオスには無限の可能性がある。
カオスを知らずして秩序を語るなど、笑い話でしかない。
すべての創造は、混沌からはじまる。
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