この宇宙では、惑星や衛星クラスの質量を持つと、物質同士は引き付け合い、時空に影響を与え、重力が強くなる。それが恒星クラスになるとさらに強くなり、やがて密度を増した物質は、原子の構造(原子核+電子)を維持できないほど密集し、原子核と原子核が接近し、核融合反応を起こす。
核融合反応によって引き起こされるエネルギーは膨大だ。
太陽と地球は1億4960万キロも離れている。時速300キロの新幹線で50年かかる距離だ。光でも8分かかる。その太陽の熱核融合で地球まで届く1秒間あたりのエネルギーの量は175兆キロワット。これは火力発電所3000万個分のエネルギーになる。
こんなに遠い星で燃えているエネルギーで、真夏のアスファルトは裸足で歩けないほど熱くなる。
その太陽の中心は2500億気圧で、温度は1500万度を超えている。太陽光のエネルギーは、この中心核で造られ、たった1秒間で430万トンの質量が、TNT火薬で約90,000,000,000,000,000トン分のエネルギーに変換されている。
そんな太陽も、夜空に輝く星々と比べたらたいした大きさではない。
冬の夜空で明るく輝くシリウスは太陽の2倍の大きさがある。
夏の大三角形を作る星のひとつ、ベガは太陽の200倍の大きさと20倍の質量を持ち、数千万年後には超新星爆発を経て、中性子星かブラックホールになるだろうと言われている。
同じく夏に観測できるアンタレスは太陽の300倍。
はくちょう座のV1489Cygという恒星に至っては、大きさが太陽の1650倍もあるらしい。星の半径が木星の軌道の半径よりも大きいということになる。
わたしたちのいる太陽系が属する天の川銀河の中心には、超巨大ブラックホールがあるそうだ。このブラックホールの持つ質量は、太陽の約400万倍程度であることがわかってきている。
中小質量をもつ恒星の燃料が尽きてくると、やがて外層を失い、その中心には重い原子が集まる。
中小質量星が外層を失った後の段階にある星は、赤色巨星に進化し、ヘリウム燃焼段階を経た中小質量星は、水素の豊富な外層を質量放出によって失い、電子の縮退圧で支えられた中心核だけからなる天体、白色矮星となる。
核融合によってエネルギーが新たに生み出されないため、白色矮星は時間とともに低温、低光度になっていく。典型的な直径は地球程度で、質量は太陽の0.6倍程度である。中心核の外側に、電子縮退の弱いヘリウム層および水素層があり、水素のバルマー線の見えるDA型、中性ヘリウムの強いDB型などがある。質量の上限は太陽の1.45倍であり、これをチャンドラセカール限界質量という。伴星からの物質の流入によってこの上限を超えると、高密度のために温度が低くても様々な核反応が起こる。中心付近に炭素が含まれていると炭素フラッシュが起こり、Ⅰa型超新星となる。炭素がなく、O、Ne、Mg等からなる場合には、電子捕獲が進み、白色矮星はつぶれて中性子星になる。
一部の大質量恒星は、ブラックホールになる。
こうした星の一生が何を物語るのかは明白である。
エントロピーの鎖を断ち切り、進化していくためには、膨大なエネルギーを放出し続ける必要がある。夜空に輝く星々のように。そしてそのエネルギーを導き出すヒントは、それ自身による重力なのだ。質量は時の流れにすら作用する。
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