ティール色の世界

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国内IT業界において2030年までに不足する人材の数は30万人〜60万人程度と予測されています。
市場規模は、2022年には20兆円を超え、2026年の予測は26兆円。

国内で慢性的な人材不足が叫ばれていますが、比較的人気のあるIT業界においても人材不足は深刻なのです。

・業界・業種の魅力や人材の需要だけを訴えても人材不足は解消しない

・そもそも労働可能人口が減ってきている上に、生き方の多様化によって労働可能でも労働を選択しない人も増えている(資産家、FIRE、海外流出、定年後の選択肢不足、生活保護、ニートなど)

・生きるために働く必要性が世の中から消えつつあるがために、そもそも楽しくなければ仕事したくないという流れ

・楽しい仕事≠楽な仕事、リーダーシップを取るべき大人側の多くがこれを理解してない→日本型教育の弊害、など

ただでさえ人が足りないIT業界ですが、10年ほど前から『猫の手も借りたい』から『猫の手ではどうしようもない』ことに気づき始めた会社が増えてきています。

国内においてIT業界は人の流動性が高めなので、この流れは数年遅れで他の業界にやってきている実感があります。

『猫の手も借りたい』からSESと称した人材派遣が激増しました。それ以前からある人材派遣と違って、こなせる仕事の質が落ちて問題になりました。OJTでカバーできないレベルの素人が現場にたくさん流れてきたんですね。

そこでプログラミングスクールが台頭してきたわけです。レベルの高い人材を派遣しますよ、と。
しかし数ヶ月から1年程度のスクール教育を経た程度で現場が救われるかというとそんな事はなくて、どうにも使いようがないから雑務をやらせたり、試用期間で契約終わらせたりする案件が増えました。それでも人が足りないから、割高感のあるSES費用を払って現場で教え込む。すると仕事がキツイとか自分のやりたかったことと違ったとか言って半分は辞めてしまう。
ようやく育ってきたかと思ったら期間契約のために去ってしまう。

付け加えると、先進的な外資系やベンチャーではすでに猫の手採用はしていません。DXはとっくに済ませてますから、猫の手を借りたいならシステムに任せてしまった方がコストメリットがありますからね。

そして、そのような企業は高いスキルに対して高い報酬を支払うことができるので、トッププレイヤーたちの多くはそこに行きます。

すると、余った猫の手人材は、猫の手が未だに存在可能な企業に流れます。そしてそのような企業は成果の出ない事態からさらに脱却できなくなるわけです。

こういった現場の実情を踏まえて、僕は起業した時に決めていたことがあります。それは従業員を雇用しないこと。
あくまでプロとして、野球選手のFA制度のように、プロとして対等にお付き合いできる方と対等に仕事をしていくスタイルです。
被雇用者独特の甘えも許されないので、気持ちよく仕事ができます。

いわゆるティール型組織形態ですね。

しかしそんな人たちと簡単に出会えるかといったらNOです。
スキルのある人がいない、出会えない。それも予測していたので、だったら自分で育てたらいいじゃない、というのが僕の答えでした。
だからこそいま、キューブカフェやクラブアリスなどをやっているのです。

そしてこの活動は自分の会社だけのためではない。働く場所や働き方を選ぶ権利は本人にありますから。ただ僕の会社のやっていることは、そうした未来の職人たちにとって魅力的な仕事を提示できるかどうか、常に試されるだけのことです。魅力がなかったら魅力のある他の仕事に就けばいい。しかもそれは、業界全体にとってプラスであるはずです。さらにIT業界にとってプラスであるならば、ITの関わるあらゆる業界や社会にとってプラスであるはずです。

ITの世界に入ろうという気持ちが少しでもある人に対して、この業界で人の役に立つことや技術を突き詰めていくことがどれだけ楽しいことか、高い目標を持っていれば誰だって苦しい時や悩む時はあるけれど、乗り越えて達成した時の喜びは何事にも代えられないことを感じてもらいたいです。

もう一度書きます。『猫の手』ではダメです。
雇う側も雇われる側もそれでは詰む時代です。

必要性を主張するだけでもダメです。全く効果が出ないでしょう。
世の中のほとんどの世界で、喉から手が出るほど人を必要としています。

育てないと。

どうやったら育てることができるのか。
どうやったら興味を持ってもらえるのか。
どうやったら興味が夢希望になるのか。
どうやったら夢希望が人生の選択になるのか。

常に相手の立場で想像していかないと、人は育たない。
これは僕が散々失敗を重ねて学んだことです。

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