スタートアップの様々な顔

この記事は約4分で読めます。

最近いろんなことに手を広げすぎて無理が出てきたので、スローダウンを決定した。優先度の低い活動はサスペンドして、選択集中を進めてきた。

A事業は営業活動ほぼゼロで活性化の勢いが増している。今月中に受注予定の案件が5件もある。それに引き続き案件がどんどん増えている状況。これまで先行投資と思って進めてきた業務合理化・自動化等をしておいて本当によかった。5件どころか10件でもこなせる体制が整っている。

B事業も順調である。とくに教育(プロ育成・スタートアップサポート)に関しては成果が出る未来まで見えてきたのと、関係者・参加者のモチベーションが自然に上がっているので、チームビルディングの一連の流れのPoCは達成できたといえる。

C事業は来たる11月6日にキーパーソンたちとの打ち合わせが実現することになった。これは当社の将来だけでなく、クライアント企業の未来も創生していくたいへん重要な会合となる。


先日、旧くからの友人(Yちゃん)の依頼で、グローバルなVC(ベンチャーキャピタル)と関わる機会を得た。HQはシンガポールにあるそこそこ有名なVCで、友人はそこでスタートアップを目指して活動をしており、共同設立者として参加してほしいという依頼があったためだ。

ここで見たものはユニコーンを目指す起業のスタイル。僕のやり方はガッツリとゼブラであり、リーン・スタートアップ的でもあるから、どこまで自分の価値観とマッチできるかという好奇心があった。実際ユニコーンを目指すのも経験として悪くないかもしれないなとは思ったが、内部的な事情でこのVCでの共同設立は難しいことがわかった。スタートアップを目指す人たちとたくさん知り合うことができて、直接いろんな話を聞くことができたのは個人的にプラスとなる経験だったが、やはりユニコーンのようにガッツリとしたやり方は時代に即さないということを改めて確認した。

スタートアップやってますとか、評価額◯◯億円のIPO(株式市場上場)を目指してますとか、キラキラしたワードに魅力やキャリア形成を感じてしまう起業家の卵たちは実に多い。ところが時代の最先端はもうそこにはない。VCは所詮お金を増やすための優良な投資案件として投資家たちを対象としたビジネスであって、ムチを打たれながら頭も体も限界まで使ってアイデアと実行力を搾り取られるのが、VCの抱えている、「The 起業家の卵たち」なのだ。

きれいなオフィスに整えられた環境。そこで自由を謳歌しているように見えて実際にはどこかの企業の従業員として明確な業務分掌を与えられた社員よりも過酷な労働を強いられている、しかもそれが自分の希望のように思わされている、さらにはそれを誇りに思ってしまう流れをみて、これじゃ「イノベーションの成功確率は1000分の3」と言われるのも仕方ない。

ここにいる起業家の卵たちは、イノベーションを起こすための知識量、経験、技術レベル、聡明さが圧倒的に足りてない人ばかりだ。一番足りてないのは覚悟だと思う。本気で突き進んでいるように見えない。なんだかどこかにフワっとした感じがあって、命かけてやってる感がまるでない。

「だったら就職したほうがいいんじゃない?」という言葉が浮かぶが、口にはしなかった。

起業やイノベーションは万人向けではない。寝ても覚めてもそのことしか考えられないような状態を作るために自分を戒める必要があるようなレベルの人にはまったくお勧めできない道である。

「成功」を探すためにピボットと称して「儲かるビジネスを探しまくる」姿は、世の中の課題を探したり創生したりしようとしているようにしか見えない。金のために課題を探したり作ったりしている時点でもうスタートラインが違うと強く感じた。

幸いだったのは、Yちゃんとじっくり向き合った結果、YちゃんもIPOを目指すような起業で自己実現したいタイプではなく、社会起業家としてきっちりとリーンに、かつゼブラに、地に足をつけてやっていくのが自分に合っていると自己認識してもらえたことだ。そうなんだよ。20年以上の付き合いで、僕はそれをよく知っているし、彼女もそれをよく知っているはずだったんだから、そうならないわけがないのだ。

VCの話は個人的にもう処理済み案件となっているが、Yちゃんの挑戦には関わっていくんだろうなという予感がある。もっとも、この予感はもう20年前からあって、いまそれが現実化してきているだけだと僕は認識しているのだけど。

会社設立や会社の発展をゴールと考えているようなレベルでは、シリアルアントレプレナーシップを識ることは決してできない。会社は手段。会社は道具。金も手段であり、道具でしかない。目的と手段を履き違えた者には、正当な成果はついてこない。

僕たちのような人間は、宇宙のように大きな夢を実現するために命を懸けて生きていたいという願望がある。そして実現のためにできることは、全部やるのだ。

それがビジョンやミッションという言葉として説明できたとき初めて、スタートラインに立つのだ。

コメント