初音ミクとYAMAHAのシンセ

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初音ミクというキャラクターは「多くのアマチュアミュージシャンによって楽曲提供されているYAMAHAが作ってクリプトンが売ってる歌声合成ソフトの2シリーズ目の最初のソフトのイメージキャラクターで、見た目は緑髪のかわいい女の子で設定はアンドロイドで、着ている服にはいろいろスイッチ類がついている」という記号的認識をしている。改めて見てみると、服の細部にいろいろくっついているのがわかる。

今回は初音ミクの装備品に関して、デジタル楽器の切り口からダラダラと書いてみようと思います。

ネギ色の由来

初音ミクの緑色は、DX7をモチーフにしているってどっかで読みました。
えっ、そうなの?

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確かに緑色のボタンが並んでいます。へぇ~。
なんで緑なんだろうと思ったことはあったけど、あんまり深く考えていませんでした。こんな身近に回答がありましたね。ちなみにネギは緑色にちなんでネットユーザー(おそらくニコ動)によって後から追加された設定なので、ネギの緑ではないです。

それでは、初音ミクの装備の細部を詳しく見てみましょう。

初音ミクの腕(アームカバー?)のパネル

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これが皆さんご存知、初音ミクです。

左腕の部分をよく見てみると、こんなパネルがついております。

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これは明らかにYAMAHAのシンセサイザー、DXシリーズの操作パネルです。
この緑色のパネルが採用されているのは、当時のフラッグシップモデルのDX1からで、1986年にDX7IIが出るまで採用されていました。DX7IIの操作系はブラックが基調で、ボタンの形状も変更されています。

初音ミクのデザイナーさんが「初音ミクはDX7をモチーフにしている」と言ったとか言わなかったとかいう話を聞きましたが、実際にはどうなのでしょうか。

DX7のパネル

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似てますね。でも何かちょっと違いますね。ボタンの左側のボタンの色の並び方とか、右側の緑色のボタンの上に薄い色で描かれている変な記号とか、それから液晶パネルのあるなしとか。

まず、上の写真の右側に並んでいる緑色のボタン(音色選択や作成で使用します)の上、ボディに描かれている変な記号ですが、これはDXシリーズで音色を作成するときに参考にします。

DXシリーズはFM音源という音源を使用していますが、その音色を作るときに使用する「アルゴリズム」が一覧表になっているのです。

まず初音ミクの腕パーツに表示されているアルゴリズム表を見てみましょう。ひとつの図形に4つのブロックが描かれています。これは、4オペレータのFM音源のアルゴリズムになります。
4オペレータのFM音源では、次の8種類のアルゴリズムが使えます。

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初音ミクの腕にある図は、これですよね。
つまり、初音ミクの腕についているパネルはDX7のものではないのです。DX7のFM音源はちょっと豪華な6オペレータなので、アルゴリズム表は次のようになります。

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同様に、DX1とDX5も6オペレータになります。
ちなみにオペレータというのは……と説明を始めてしまうと長くなってしまいますので、ここでは割愛いたします。
ともかく、初音ミクの左腕は4オペレータなのです。そんでもって音色選択ボタンは緑色なのであります。液晶パネルは無いのです。それから、左側に並んでいるボタンの色の並び順。

機種を絞れそうな情報が集まりましたね。それでは実機の写真を見ながら確認してみましょう。

DX9のパネル

レアモデル過ぎて綺麗な画像が見つかりませんでした。DX9はDX7の廉価版で、見た目はDX7によく似ています。大きな違いはDX7のFM音源が6オペレータであるのに対し、DX9のそれは4オペレータであることです。

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これはなんか違います。

DX21のパネル

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これもなんか違います。緑のボタンしかありません。

DX27のパネル

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これもボタンが全部緑です。

V2のパネル

国内では「V2」という名前で販売されていたシンセサイザーですが、V2はDXシリーズの血を引いています。海外ではDX11という名前で販売されていました。

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V2のボタンは黒いです。これは先述した、DX7II以降のボタンに似ています。

 

DX100のパネル

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こ、これだ!並んでいるボタンの色も数も、アルゴリズム表も、そのまんまです!

初音ミクの左腕のパネルは、DX100をモチーフにしているんですね。

DX100といえば、DXシリーズの末弟で、最も廉価な49鍵小型シンセです。アフタータッチが無いピアニカみたいな鍵盤ですが、このモデルにはストラップを取り付けることができます。また、モジュレーションとピッチベンドが本体の端に付いていて、ショルダーキーボードとして使うことが想定されたデザインです。そんな特殊な事情もあって、中古のDX100は現在プレミア価格がついています。

というわけで、アームカバーの調査はおしまいにしましょう。

次はスカートです。

初音ミクのスカート

初音ミクのスカートにも、何やら怪しいものがたくさんついています。決してこれは適当につけたデザインではないということを確認しましょう。

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一部拡大。

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これはMIDIポートです。間違いありません。
MIDI IN、MIDI OUTに加え、MIDI THRUまで付いています。

▼参考:本物のMIDIポート

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参考:MIDIケーブルを接続したところ

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スカートにこんなもの接続したら脱げてしまいそうですが、きっと初音ミクのスカートはプラスチックかメタルかなんかで出来ているのでしょう。

MIDIでミクを操作する?

これだけで終わってしまってはつまらないので、もうちょっと話を続けます。

VOCALOIDシリーズは、歌声ライブラリです。つまり、音色のデータベースです。VOCALOID Editorという簡単なエディタが付いていて、音程と歌詞を入力すれば歌ってくれます。MIDIデータから音階の情報読み込ませて、それに歌詞を当てはめて歌わせることもできます。しかしVOCALOIDで出せるのは歌声だけで、他の楽器の音は出せません。

そのため、他のDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)というソフトウェアと組み合わせて使うのが一般的です。代表的なDAWはCubase、Pro Tools、Logic、SONARあたりでしょうか。DAWはピアノやドラムといった楽器と同じようにVOCALOIDの歌声ライブラリを使用します。あるいは、VOCALOID Editorで作った歌をWAVなどの音声ファイルに書き出して、DAWのトラックに読み込んで使用します。

ところで先ほどスカートの調査で出てきたMIDIポートですが、これは複数のデジタル楽器を接続するために使用します。MIDI INはコントロールされる側、MIDI OUTはコントロールするための端子だ。MIDI THRUについては割愛します。

例えばキーボードのMIDI OUTから音源モジュールのMIDI INにケーブルを繋きます。すると、キーボードを叩けば音源モジュールの音が出る、という寸法です。同様に、シーケンサーという自動演奏する機械から音源モジュールに接続すれば、その音源を使用して自動演奏できるという具合です。

そう考えると、初音ミクにMIDI IN端子がついているのは妥当です。つまりミクに鍵盤を繋いで、その鍵盤を叩くとミクが歌ってくれます(という妄想)。

しかし、MIDI OUTが初音ミクに付いているということについてツッコミを入れた人は今まで一人もいないと思われます
初音ミクが外部音源をコントロールするのでしょうか?
初音ミクは知能を持っているので、おそらくMIDI OUTから機材につないで、ミクがそれを制御するのでしょう。と、思っておきましょう。

ところで、以上の前提を踏まえて次の動画を見ていただきたいのです。

http://www.youtube.com/watch?v=NO7IOCVsCnk
ニコニコ動画で「あの楽器」として有名になった、ミクさんのサイバーなショルダーキーボードです。
この動画で、ミクは楽器を手で弾いています。MIDIケーブルは接続していないようです。

きっとこのキーボードにはMIDI INが付いていないんだ……と思うことにしましょう……。

ところが、ここでさらに次の動画を見ていただきたいのです。

この初音ミクが持っているのは、YAMAHAの「ショルキー」という、実際に存在するキーボードです。とっくの昔に販売終了していますが。僕も所有していました。

ショルダーキーボードを略してショルキー。安易なネーミングですね。本当の機種名はSHS-10です。とっつきやすそうな名前が表す通り、キーボードの初心者でも気軽に買える安価なモデルでした。「DEMO」ボタンを押すとWham!のLast Christmasが自動演奏されます。狭い操作パネルの中にわざわざ「DEMO」ボタンを付けるセンスに恐れいったものです。しかもご丁寧なことに、MIDI接続していると、外部音源でLast Chrismasが自動演奏されます。デモなのにMIDI信号が出力されるのです。ライブ中に押してしまうと突然ひとりでにLast Chrismasです。恐怖のボタンです。

話がそれました。
ショルキーにはMIDI OUTポートがついています。ショルキーに内蔵されている音源はDXシリーズと同じFM音源ですが、しょぼいのでわざわざMIDI INする必要がありません。

この動画で、初音ミクとショルキーはMIDI接続されています。
ということは、ショルキーから初音ミクの音源(声?)を操作しているということになるわけです。
しかしミクはショルキーの鍵盤を叩いているのです。うーん??
メビウスの輪みたいな話になってしまいました。

さらに言いますと、オーディオケーブルがショルキーから出ているように見えます。
ということは、初音ミクの音源(声?)はおそらくミクさんの口から発せられていて、ショルキーの音はショルキーからどっかのアンプに接続されて出ているということになります。

なにが言いたいのか分からなくなってきました。

ミクに装備されている第3の端子、MIDI THRU(Through)ですが、これはMIDI OUTから受信した信号をその名の通りそのままスルーして別の機器に送り出す、つまりMIDI機器をデイジーチェーンするための端子です。ミクさんを介して複数のMIDI機器が繋がるわけですか……。

まとめ

予告通りくだらないことをダラダラと書いてきましたが、くだらない話だけにまとめも何もありません。

他に気づいた点といえば、初音ミクのオーバーニーソックス(?)の横の模様は黒鍵をかたどっていることくらいでしょうか。

そういえば初音ミクの声質を広げる、MIKU APPENDが今月末に発売されますね。

"VOCALOID2 キャラクターボーカルシリーズ01 初音ミク HATSUNE MIKU" (クリプトン・フューチャー・メディア)
"初音ミク・アペンド(Miku Append)" (クリプトン・フューチャー・メディア)

ところで初音ミクって音楽ソフトでReWireにも対応してるくせに、未だにWindows版しかありません……。Mac OS X上でどうやってVOCALOIDを動かしているかについて書いた過去の記事はコチラ(巡音ルカ on Mac OS X)

コメント

  1. Chabo より:

    へー。

    色々考えられてんだなミク。

    リンレン、ルカとかも何かモデルになったものがあるんかな。

    なかなか興味深い。

    • うずら より:

      > ちゃぼ
      リン・レンは、同じくヤマハのEOSシリーズ。(小室哲哉が初期のEOSのCMしてた)
      このEOSはシンセサイザー本体にスピーカー内臓してるのが特徴なんだけど、リン・レンの足首のところについてる。
      後期のEOSはリン・レンの腕のパネルみたいに、大型液晶パネルで操作が楽にできるのがウリだったし。黄色(オレンジ)はEOS BXってモデルから来てると思う。

      ルカは、ちょっとマニアックなんだよね。
      知ってる人なら一発で分かるんだけど、これもヤマハのVLシリーズか、その後継のVP1のどれか。アコースティック音源がウリだったので、首元が管楽器みたいになっているのかと。

  2. よも より:

    か…KAITOにーさんは?(´;ω;`)ウッ…
    あと、もう一人おねーさんがいたよね。
    名前が思い出せない…。
    マジで記憶力ヤバイ。

    • うずら より:

      > よも
      KAITOとMEIKOね。あの初代シリーズにはガジェットついてないから、そういうのは無いんじゃない?

  3. Chabo より:

    まずいな。精巧なおもちゃが欲しくなってきたな、ミクの。

  4. のいあん より:

    初音ミクのスカートの部分では、TX816っていう音源モジュールがモデルとなっています。
    シンセサイザーを知ってる人は知っていると思いますが、DX7を8台積んだ豪華マシーンです。