道。
まっすぐな道。曲がりくねった道。坂のある道。海の見える道。
目を瞑ると、見えてくる。立体的に絡み合った無数の道が、すれ違い、交差し、ひとつの大きな形をつくっている美しい姿が。
陽の当たる道。闇に輝く道。見えない道。狭い道。広い道。
わたしたちは道を進む。
カオスは無秩序ではない。究極の秩序がある。
壁。煉瓦造りの壁。テラスの白いペンキはところどころが剥がれ、風に揺れている。
軒下に吊り下げられたドライフラワーの束。
可愛らしい大きさの芝生の庭には、錆びたブランコが揺れている。
森。木漏れ陽。
地面から湧いてくる湿気は、むせ返るような緑の柔らかい刺激。
家の陰には、霜柱。
乗り捨てられた茶色い自転車。
見える景色はモノクロなのに、どうして色がわかるんだろう。
僕は確かにここにいた。
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