昨年に続き、今年も富士山に登ってきました。
登る前のあれこれ
昨年の初登頂でいちばんの喜びは、心臓の不安を克服できたことだ。今年は悪夢を見たり、greedyな人たちに心境を脅かされたり、登頂予定の1周間前から左足が痛んで歩けなくなったり、いろいろあって直前まで諦めざるを得ないと思っていた。こんな逆境こそが、今回の試練だったと思う。
初日:8月18日(木)
準備は前日の夜に済ませた。朝起きて昨日のカレーの残りを掻き込み、湯を沸かして保温ボトルに入れて、猫たちが2日間生き延びられる準備を整え、ギリギリの時間に家を出た。
五合目まで
6:45 バスタ新宿発(富士急バス)
10:49 富士スバルライン五合目(標高 2,305m)
中央道の事故渋滞に巻きこまれ、1時間20分遅れで到着した。当初の予定は11時登頂開始だったが、五合目の気圧に体を慣らす必要があったし、お腹もすいていたので出発は1時間遅らせて12時とした。
五合目〜六合目
12:20 登山開始
八合目蓬莱館に予約を入れているが、到着が遅れればそれだけ仮眠できる時間が減ってしまう。しかも蓬莱館は昨年宿泊した白雲荘よりも標高が50m低いところにあるので、その分早めに出発するかどうか迷ったが、体力優先で昨日と同じく2日目は夜中の0時頃に出発する目論見でスタートした。
六合目へ向かう道は幅が広く傾斜が少ないため難しさはさほどない。緑も多い。
昨年の下りでもおかしな雲を見たが、今年もまた変な雲が。
13:00 六合目(標高 2,400m)
ここから七合目までは、斜面をジグザグにひたすら登る。空気もだんだん薄くなってくるため、ここでペース配分を間違うと後半が厳しくなる。今年はかなり体力をうまく温存しながら行けた。
座らない小休止と座ってしっかり休むのは、きちんと分けたほうがいい。
七合目
14:49 花小屋(標高 2,700m)
七合目最初の小屋、花小屋に到着。みな状態は好調。
ストックを突きながらただただ歩く道は終わり、ここから岩場が始まる。
15:00 日の出館(標高 2,720m)
岩場の洗礼を受けて、汗をかき薄い空気に息を切らしながら次の山小屋についたと思ったら、標高は20メートルしか稼げていないことにガッカリする場所。
15:30 鎌岩館(標高 2,790m)
昨年は営業終了して越冬のために雨戸もしっかりと閉まりひっそりとしていた山小屋がたくさんあったが、今年はすべてやっている。
山中湖が見える。写真には写っていないが河口湖も見えた。
15:49 富士一館(標高 2,800m)
岩場は急斜面なので標高を短時間で稼げるが、酸素が足りずにフラッとすることがあるし、急激に登ると高山病のリスクが高まるため、休み休み行くのがよい。しかし八合目からの登山道が狭く、後続の人たちに道を譲れるうまい場所で休憩する必要がある。
本七合目
16:11 鳥居荘(標高 2,900m)
もうそろそろ八合目かな、と思った頃にやってくるのが本七合目の看板である。
16:35 東洋館(標高 3,000m)
パノラマで撮影してみた。
森林限界はとっくに超え、岩肌だらけの富士山。眼下に広がる世界も、現在いる場所とはかけ離れた感じがしてくる。
八合目
17:55 太子館(標高 3,100m)
影富士。美しいけど、太陽が富士山の向こう側にいるということになるので、温度が下がる。日没が遠くない。
両手両足を駆使しながら、体を上に移動していく。
どんどん伸びていく影富士は、平地に早めの夜をもたらす。
18:30 蓬莱館(標高 3,150m)
今回の宿泊地に到着。予定より30分遅かったけれど、いいペースでした。なにより浅川さんが景色を楽しみながら登れたのがよかった。
靴を脱いで荷物を整理し、山小屋を出る。改めて山の空気のおいしさと絶景を楽しむ。
遥か上の山際に見えているのは、昨年宿泊した白雲荘。昨年はここ蓬莱館を宿泊先と間違えて、「白雲荘なら隣ですよ、15分もかからないです」と言われてこの景色を見て絶望したのを思い出す。
19:00 夕食
山小屋定番のカレー。レトルトだろうからどこでも味は変わらないかと思っていたけど、食事は白雲荘のほうがおいしかったように感じました。
外はすっかり夜景。手前に見えるのが吉田市街。右奥のほうは小田原から平塚にかけて。地平線際に三浦半島が見える。
2日目:8月19日(金)
0:23 蓬莱館出発
ストック、ライト準備。気温は昨年より少し高いかもしれない。
0:58 白雲荘(標高 3,200m)
思ったより楽にここまできた。
1:26 元祖室(標高 3,250m)
ここでもみな、余裕があった。
本八合目〜頂上
2:30 本八合目トモエ館(3,400m)
休憩。ここから先には山小屋も休憩所もない。すべての防寒着とレインコートを身に着け、ホッカイロを貼り付け、防寒対策をする。体が少しでも冷えると、呼吸も苦しいし体も動かなくなる。今年は防寒着を1枚多めに持っていったが、体を冷やさないとこんなにも違うのかと体感した。
浅間神社の境内入り
夜が明けてきた。美しい。
雲の合間に、朝焼けを映す何かが。
山中湖でした。
4:46 ご来光のための場所確保
チームが寒さ・薄い空気・筋肉疲労でこれ以上は危険だと判断し、頂上の100メートルほど下でご来光を待つための場所を確保しました。
4:56 ご来光
ご来光を何度も拝んでいらっしゃるベテランの登山家さんが「こんな(美しい)ご来光、初めて見た」と感激していらっしゃいました。本当に美しい夜明けでした。真っ赤な太陽が雲海を照らしていく様子は、古事記にある日本のはじまりを想起させられます。
男性に声をかけていただきました。本八合目あたりで隣に座って休憩なさっていて、装備が特徴的だったのと、人懐こそうな瞳と目が合って話しかけようかどうか迷ったので、覚えていました。60代くらいかと思っていたら、なんと80代だそうです。わたしたちのチームよりも早いペースで登っておられました。
頂上手前の浅間神社鳥居(標高 3,600m)
5:40 頂上(標高 3,700m)
浅間神社へ御参り。
頂上から改めてみる朝日。
昨年は入山可能最終日(の翌日)だったため、神社奥院も小屋もトイレもすべて閉まっていましたが、今年は小屋で温かいものを口に入れることができました。豚汁。
6:27 富士山火口
浅川さんの体力を鑑みてお鉢巡りは断念。これは正しい選択でした。のちに下山して思ったのですが、お鉢めぐりをしていたら、左足をかばいながら歩いていた僕のほうがまずいことになっていたかもしれません。
下山
6:30 下山開始
昨日の大雨で染み込んだ水でしょうか、断層から湧いた水が凍って氷柱になっています。
幻想的な光景に心動かされつつも、これから始まる忍耐の下山を思い、覚悟を決めます。
七合目あたりから下は雲に覆われています。後にこの雲(霧)の冷気に救われることになります。
延々と続く、滑りやすいつづら折り。
9:13 吉田ルート下山 位置38番
ここで絵手紙を書きました。
11:26 七合目(標高 2,700m)
写真を撮る余裕なし。
12:33 六合目(標高 2,400m)
ようやく希望が見えてきました。
12:57 吉田ルート入口
13:20 富士スバルライン五合目
体力的にきついのが上り。精神的にきついのが下り。吉田ルートの下りは精神力が試される。
その後
16:20 ふじやま温泉
温泉に入り食事をしました。
17:33 新宿行きバス出発
17:18富士急ハイランド発のバスがまだ到着していなかったので、その便のチケットを買うことができました。
余談:出発前日(8月17日)
早朝に目覚めてすぐ、禊の心境で水浴びをした。1週間激痛や苦しみと戦ってかなり疲弊していたのだが、ようやくまともに考えたり落ち着いて瞑想したりできるくらいに回復していた。水浴びのあと、頭に浮かんできたことをメッセージにして、一部の友人送っていた。
【先ほど禊で得たビジョン】
■富士=不二。
→2度目はない。
→初回(昨年)、剣ヶ峰を制覇できなかったこと、ご来光を拝めなかったことを取り返そうとするのは、執着心。
■人生一度しかチャンスがないこともある。
→他人に変化への即行動を求めるのであれば、己もそれを実践せよ。
→諦念を知れ。
■今週のキューブカフェで、なぜかオンラインで皆にアンコール遺跡群の写真を見せてた。特に感動的だったアンコールワットの日の出の写真は皆の心に響いた。
→富士のご来光が見られなくても、素晴らしい夜明けをすでに見ているのだから満足せよ。
■発起人だから行かなくては。
→キューブカフェとは富士山は同じ。皆にバトンタッチして、次へ行きなさい。
今年の富士山登頂に僕は何か願掛けのようなことをしようとしていたのかもしれない。そう思ったとき、執着心をすべて捨てることができた。
すると、心がスッと楽になった。やめる決断をしてよかったと思った。またいろいろ背負い込まされてしまったものを、ようやく手放すことができた。
それから一日中、いままで溜め込んできたことをすべて伝えるべき相手に伝えることをした。この日はいろんなことが起きた。キューブカフェで懸念だったことも、まっすぐに向き合うことで、いろいろ見えてきた。
夜を迎え、やり取りが落ち着いて一息ついた。そこでようやく、自身の欲求を認識した。いろいろ抜きにしたら、やっぱり僕は富士山に行きたいのだ。もしかしたら登るどころかスタートすらできないかもしれないけれど、五合目まではバスに乗っていれば着くし、バスのチケットは既に人数分購入してあったから、行けるところまで行ってみよう。
そうして直前になって、行く決断をした。足の状態はまだ完全ではなくて、左足は20度くらいしか曲げられなかった。それ以上は痛みに強い僕でも無理だった。しかも曲げたまま維持しようとすると、歯を食いしばるような努力を要した。これで行こうっていうのだから、僕は本当にバカだな。でも先週からずっと感じてること。「直前ギリギリになって、間に合う」これは確信だった。根拠なんてない。
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