ピアノと、オーケストラと、ともに奏でる

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昨晩までずっと辻井伸行さんの演奏を追いかけていました。初めて知ったのは今から20年以上前、彼がサントリーホールで初めてのソロリサイタルを行った頃です。当時まだ彼は12歳。当時、世の中に彼よりも技術のあるピアニストはたくさんいるのにもかかわらず、涙が止まらなかったことをよく覚えています。それから、彼の演奏から離れていました。いろんな理由をつけていたけれど、長い間彼の演奏を聴けなかった理由は自分の中にあると認識したのは昨日のことです。昨日、BBC proms(2013)での演奏を視聴しました。リンク先の映像がそれです。ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18。これは僕が大好きな作品のひとつです。ラフマニノフ本人による演奏はもちろん、ホロヴィッツ、アシュケナージ、ツィメルマン、キーシン、ラン・ラン、フェドロヴァ、……。(アルゲリッチは決してラフマニノフの2番を弾かない)辻井さんの音は、一言で現すと「天使」です。ひとつひとつの音が衝撃的なまでに透き通っています。pure, joyful, それを支える想像を絶する音と愛の世界が、音に関して凡人である我々にも垣間見えてしまうのです。人の心を動かす力のある演奏です。2013年の辻井さんは、圧倒的でした。苦しみのかけらも見せないことが、どれだけの救いの音になるのか。これが天才であるということか、と納得しました。己の純粋性から逃げようとしていた時期に聴けなかったのも当然です。彼の演奏は突きつけてくる。すくなくとも僕にとってはそうでした。昨晩遅くになり、とうとう30歳を過ぎた辻井さんの作品まで追いつきました。

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