天命

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一本の木は、ひとつの魂。
一本の木は、ひとつの宇宙。

梢とは、木の先端のこと。宇宙の原始。種子からはじめの梢が陽の光を求め、種子のエネルギーを使い果たす前に日の目を見るために、上へ上へと伸びてゆく。

同時に、根は下へ下へと伸びてゆく。一本の木は、地表を境目として鏡合わせであり、互いに陰陽の太極をなす。

発芽とは、もともと一つであった種子つまり魂が、宇宙を育むという共通の目的のために、それぞれの使命を果たすべく、道を分かつこと。
どちらが欠けても木という宇宙は育たないため、別々の道を選択する。

梢は未だかつて経験したことのない空(くう)に向かい勇敢に伸びてゆく。道なき道を切り開き、陽の光を求めて伸びてゆく。

枝は、梢の通ってきた道の証。
そこには葉が芽生え、葉は太陽から無償で与えられる愛を受け取り、そのエネルギーは枝を通して宇宙全体に循環する。

枝にはまた、蕾が生まれる。愛の証である。蕾はやがて花開き、神々は祝福を受ける。
別の宇宙から生命の種を受け止め、実を結ぶ。

実はやがて熟し、様々な生命を育む。育まれた生命たちは新たなる宇宙を創生する種子を、未知の領域へと運ぶ。

枝はまた、分け身をする。染井吉野のように。挿木によって自らの分身をつくる。
分けた身は育ち、同じように空を切り開き、道の領域に枝を広げてゆく。

梢には、選択がある。様々な選択をとるために枝分かれをする。それぞれの枝はまた、それぞれの未知の領域を探るように、生命の道を切り開いてゆく。別れた道いずれも、梢をもつ。

梢が切り開いた道を通り、陽の恵みは地の下にも巡らされる。
地の下は人の目には見えぬが、地の上と同じことが起きている。根の先にも梢があるが、梢とは呼ばれない。名もなき梢は暗闇を切り裂き、未知の領域を探る。

根は梢によって切り開かれた枝葉より陽光の力を得ながら、同時に、吸い上げた地の力を梢の先端にまで届ける。

こうして陰陽のエネルギーは宇宙の隅々まで循環する。

魂の片割れとは、原初のとき、つまり種子から生まれ出るときに約束を交わした相手のことであり、相補の関係にある。

片割れとの出会いとは、時空を超えて全ての始まりへと枝や根を遡り、約束の地つまり種の原点、宇宙の中心で再会を果たすこと。

子である「新たなる宇宙の種」を創造するためには、雄蕊と雌蕊の結合を要する。他の宇宙と掛け合わせた種子を産むことで、ひとつひとつの宇宙は多様性を得る。花粉をもたらす雄蕊は、種に自らの宇宙の情報を与える存在。

一方で枝と根をなす陰陽の関係は、切っても切れない運命の関係。切れば宇宙は死ぬ。原初より悠久の時を経て共にある。

その目的は、この地を緑で満たし、浄化し、この地にある神々の化身たちを生かし、育むこと。

僕は彼女に何も加えないし、何も影響しない。
彼女はただ、僕の存在を思い出しただけ。

魂の記憶。

その存在、根の存在を体感で本質的に理解できるのは魂の片割れだけ。

人々は木の根を見ることも、根を感じ取ることもできない。

実を結ひ育んだ大木の下には、豊かな生態系が育つ。

木はマルチバースを成す。未来を担う森を育ててゆくことに目覚めるということが、生命の惑星・地球を癒す事と同義であることに目覚め、さらに宇宙に愛を広める使命を果たす過程なのだとしたら、木は統合され、同じ使命を持つ木々は統合されて然るべき。

いまの僕に言えるのは、それだけです。

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