ターニングポイント

この記事は約3分で読めます。

小学校からの幼馴染で、偶然同じ高校に進学し、今も仕事の取引先として絡んでいるMが今年初めに腰痛で入院した。

そろそろ回復してバリバリやってっかなと思って連絡したら、過労でまた入院したという。

昨晩は久しぶりに電話で長話をした。

奴はもう8年も単身赴任してる。

部下思いで真面目で正義感があって、ひとつの地域を長として任されてる。

奴が中学校の卒業文集に書いていたことを読み上げてやった。

奴はこう書いていた。

ーー受験勉強で変わり映えのない日々が続くと、生活上の新鮮な事件が起きなくて、毎日同じようなことの繰り返しで、振り返ったところで何も面白くないし、思い出も残らない。これから更に忙しくなるであろう日々で自分達は本当に毎日を満足しているのだろうか。楽しく過ごさなくては、人間は死んでいるのと同じであって、生きている意味がないのではないか。僕たちは考えなくてはならない。

奴はハッとしたようだ。

大切なものを守るために命を張るのもいい。しかし我慢のしすぎは死に直結する。俺は真面目に奴の命を心配しているが、あいつは俺の心臓の心配ばかりするんだ。俺がタバコをやめないことをまるで母親のように心配するんだ。

命の使い方。

俺は奴に何をするなとかこれはいけないとか一切言ったことはない。

でもあいつが先に死ぬのは困る。

入院を機に、奴は人生について立ち止まって色々考えたそうだ。

電話中に3回も同じことを言ったから、本当に考えたのだろう。

何処もかしこも人手不足が深刻だ。

自分も地獄のような最前線をかいくぐり、なんとか生き延びた。

だから最前線で責任を負って生きてる奴がどれだけの重圧と理不尽の山に埋もれそうになりながらやってるか、少しはわかる。

かたや人が足りないといい、もう一方では仕事がないという。そんなミスマッチで溢れている。

国内外さまざまなコミュニティに顔を出していると、その実態がありありと見えてくる。

忘れもしない、2016年。

当時働いていたところで、斜め後ろの席にいた同じ部署のおっちゃん。

ずいぶんと仲良くさせていただいた。人の相談には親身になって対応する、自分の守備範囲を超えて人に尽くすタイプのおっちゃん。みんなに慕われてた。

そんな彼がある日、会社に来なかった。

昨日まで元気に仕事してたのに、

その日の朝、寝床で冷たくなっていたそうだ。

過労。ストレス。

善意のままに行動して、彼は全てを背負ったまま、あっちの世界に行ってしまった。

最前線は、それほどまでにストレスフルなのだ。

今までの人生で失った同僚は、彼だけではない。何人も見てきた。自分が生き残ったのは、ただの運だと思う。

しかし僕たちが携わってきたことは、やめることができなかった。

革新が起きなければ未来がない。誰かが今でも命を削ってやっていかないと、国家や市場や多くの家庭の経済など、さまざまなものが崩壊するから。

俺は幼馴染に、そんな死に方だけはしてほしくない。

もっと自分を大事にしてほしい。

今という瞬間の喜びに、もっと真剣になるべきだ。

そんな思いは言葉にしなくても、伝わったと思う。

コメント