高評価3,000のおはなし

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それは、にゃーちゃんとの出会いの話。

少し長い話になります。

わたしは当時、10年以上続いた結婚生活に終止符を打ち、ひとりぼっちでした。結婚当時は、犬4匹と猫2匹と共に暮らしていましたが、離婚してひとりになりました。

海の近くに、今のパートナーとなる人が住んでいました。当時は友人でした。そのパートナーの家にはたまに、大きな野良猫が遊びにきました。アパートの玄関の前に座って待っているのです。ドアを開けると家主よりも先に上がり込み、好きな場所で好きなだけくつろいで、帰りたくなると玄関に行ってニャアと鳴くので、ドアを開けてやると、何処かへ去っていくのです。

どうやらその猫は、同じように訪問する家を何件か巡っていたようです。彼の動向を探ると、普段は近所の神社に生息しているようだということはわかりました。

それから1年ほど、気ままに現れては家に上がるという関係が続きました。

1年後、家主が引っ越しをすることになりました。それから暫く、その猫のことをたまに思い出しながら離れた場所で暮らすことになります。

わたしとパートナーは海が好きなので、たまにその猫のいる街を訪れました。うまく会える時もあり、会えない時もありました。

それから半年以上過ぎた、ある冬の寒い日です。わたしとパートナーは、またその街を訪れる機会がありました。

神社の近くで勝手につけた名前を呼びましたが、現れません。15分くらい名前を呼んで探しましたが姿が見えないので、帰ろうとしたそのとき、遠くから全力疾走して来る巨体が。

効果音をつけるなら「ドドドドドドド」です。粉塵を巻き上げる勢いで走り寄ってきたのは、あの猫でした。

彼はわたしたちのいる場所まで走ってくると、足元にしがみつき、ニャーニャーと鳴きまくりました。

用意していたフードを与えると、よほどお腹をすかせていたのか、あっという間に食べてしまいました。

よく見ると、以前は普通だっだ耳が片耳だけ潰れており、額には傷跡があります。

「おまえ、大変だったんだな」

わたしは当時ペット禁止のアパートに住んでいたので、連れて帰りたい気持ちで一杯でしたが、その場は諦めて帰ることにしました。

バックミラーにいつまでも映る彼の姿を見て胸を痛めました。

それから仕事も手につかないほどにあの猫のことが気になって仕方がありません。

2週間後、意を決しました。

ペットOKの住まいに引っ越すこと。そして、あの猫を迎えにいくこと。

わたしの車は猫が乗れない代物だったので、ペットOKのレンタカーを借りて、またあの街へ行きました。もちろん、のちにパートナーとなる彼女も乗せて。

神社のそばでまた名前を呼ぶと、今度は3分くらいして近所のアパートの外階段を転がり落ちるように降りてくる巨猫。

また足元に「ガシッ」とつかまり、離しません。

しゃがむと、膝の上に乗ろうとしてきます。

「おまえ、ウチ来るかい?」

「ニャー!」

「ここには戻って来られなくなるけど、いい?」

「ニャーー!」

車のドアを開けると、猫は自分から乗り込みました。

そっか、わかった。もう迷わないことにするよ。

それから彼は、我が家にいます。

獣医さんにチップの有無も確認してもらい、野良猫であることを確定するためにできることは全てやりました。

無事にペットOKの家に引っ越すこともできました。

わたしは彼の自由を奪う代わりに、雨風、寒暖、空腹の心配のない安全を提供しています。

人生で迷った時、わたしは彼に相談するのです。

「にゃーちゃん、こんなことがあったんだけど、どう思う?」

彼の回答はいつもこうです。

『人間はくだらないことで悩む、バカだニャ』

興味なさげにしっぽを揺らしてすましている彼を見て、わたしはいつも、幸せの原点を教えてもらうのでした。

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