貪瞋痴

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三毒(さんどく)、三不善根(梵: akuśala-mūla; パーリ語: akusala-mūla)とは、仏教において克服すべきものとされる最も根本的な三つの煩悩、すなわち貪・瞋・癡(とん・じん・ち)を指し、煩悩を毒に例えたものである。

三毒(貪瞋痴)は、人間の諸悪・苦しみの根源と考えられている。

Tīṇimāni bhikkhave akusalamūlāni. Katamāni tīṇi:
lobho akusalamūlaṃ doso akusalamūlaṃ moho akusalamūlaṃ.

比丘たちよ、これら三つの不善の根がある。いかなる三か。
貪の不善根、瞋の不善根、痴の不善根である。

パーリ仏典, 増支部三集70 不善根経, Sri Lanka Tripitaka Project

貪(とん)

  • 梵: rāga, ラーガ 梵: lobha, ローパ。象徴する動物は鶏。
  • 上座部仏教における不善心所のひとつ。
  • 説一切有部の五位七十五法のうち、(心所法-)不定法のひとつ。
  • 大乗仏教アビダルマにおける六つの根本煩悩のひとつ。

貪欲(とんよく)。むさぼり(必要以上に)求める心。一般的な用語では「欲」・「ものおしみ」・「むさぼり」と表現する。貪り、心にかなう対象に対する欲求を意味する。我愛。万の物を必要以上に求める心。

貪(rāga)とは何か? それは三界への愛着を本質とし、諸々の苦を引き起こすことを作用とする。
(何等為貪?謂三界愛為体、生衆苦為業。)

『大乗阿毘達磨集論』(Abhidarma-samuccaya)

対治

Siñca bhikkhu imaṃ nāvaṃ sittā te lahumessati
Chetvā rāgaṃ dosaṃ ca tato nibbāṇamehisi.

比丘よ、この舟から水を汲み出せ。
汝が水を汲み出せば、軽やかに進むであろう。
貪欲と瞋恚とを断ったならば、汝は涅槃に達するだろう。

パーリ仏典, ダンマパダ, 369, Sri Lanka Tripitaka Project
無貪(alobha, 無執着)
布施(dāna, 旦那)

瞋(じん)

  • 梵: dveṣa, ドヴェーシャ 巴: dosa, ドーサ。象徴する動物は蛇。
  • 上座部仏教における不善心所のひとつ。
  • 説一切有部の五位七十五法のうち、(心所法-)不定法のひとつ。
  • 大乗仏教アビダルマにおける六つの根本煩悩のひとつ。

瞋恚(しんに)。怒りの心。「いかり」・「にくしみ」と表現する。怒り恨みと訳される。憎しみ。嫌うこと、いかること。心にかなわない対象に対する憎悪。自分の心と違うものに対して怒りにくむこと。生きとし生けるものに対する冷徹な心。

瞋(pratigha)とは何か? それは苦、衆生、苦を備えた心への怒りを本質とし、安穏ならざる〔状態〕に住し、悪しき行い〔を為すこと〕の依り所たることを作用とする。
(何等為瞋?謂於有情苦及苦具心恚為体。不安隠住悪行所依為業。)

『大乗阿毘達磨集論』(Abhidarma-samuccaya)

対治

Mettaṃ rāhula bhāvanaṃ bhāvehi. Mettaṃ hi te rāhula bhāvanaṃ bhāvayato yo vyāpādo so pahīyissati.

ラーフラよ、慈の瞑想を深めなさい。というのも、慈の瞑想を深めれば、どんな瞋恚も消えてしまうからです。

パーリ仏典, 中部, 62.大ラーフラ教誡経 p148, Sri Lanka Tripitaka Project
無瞋(adveṣa, 非憎悪)
慈(mettā, 与楽)

癡(ち)

  • 梵: moha, モーハ 巴: moha, モーハ。象徴する動物は豚。
  • 上座部仏教における不善心所のひとつ。
  • 説一切有部の五位七十五法のうち、大煩悩地法の一つ。
  • 大乗仏教アビダルマにおける六つの根本煩悩のひとつ。

真理に対する無知の心。「おろかさ」と表現する。苦痛や毒を示す概念であり、「妄想、混乱、鈍さ」を指す。時には無明(Avidyā )と同義である。別名を愚癡(ぐち、愚痴)、我癡、また無明ともいう。

対治

無癡(amoha, 非妄想)
般若(paññā, 知恵)

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